トップページ
プロフィール
講義・演習
2010年度
Fiscal and Financial System in Japan A
基礎文献購読
総合講座(コーディネーター)
演習1(2年生ゼミ)
演習2(3年生ゼミ)
演習3(4年生ゼミ)
国際金融論(秋)
2009年度
Fiscal and Financial System in Japan A
基礎文献購読(統計的アプローチの基礎)
演習1(2年生ゼミ)
演習2(3年生ゼミ)
国際金融論(秋)
出張講義・模擬講義
2008年度以前
文献紹介
国際政治経済学関連文献
English
リンク
ゼミの記録
2009年7月14日
2009年7月21日
2009年10月6日
2009年7月14日
ヘクシャー=オリーン・モデルについて解説しました. →資料(PDF122KB)
2009年7月21日
(1) 春学期の内容を大まかに復習しました
資料(PDF64KB)
(2) 夏期休暇中の課題を出しました.
課題(PDF70KB)
・春学期は貿易論の基礎を勉強しましたので,その内容をまとめてもらう形になっています.
・秋学期最初のゼミの時間に提出してください.
・質問など随時メールで受け付けます.
2009年10月6日
発表者:教員
発表内容:余剰分析
 ミクロ経済学において用いられる,「余剰分析」について説明しました.「余剰分析」とは,ある政策が社会全体の利益(これを専門用語では社会的厚生(social welfare)と言います)にどのような影響を与えるかを分析する方法のひとつで,厚生分析の方法の基本です.したがって,学部レベルのミクロ経済学の講義でも必ず解説されます(そして期末試験にも出されることが多いようです).
 さて,ここでいう「社会全体の利益」には,買い手側(消費者)の享受する利益のみならず,売り手(生産者)の享受する利益も含まれています.この点,初学者は誤解しがちなので注意してください.
 ポイントは,需要曲線の解釈です.通常,需要曲線は,「リンゴ1個○○円のとき何個まで買いたいですか」という質問に対する答えを表しています(需要曲線を縦軸から横軸に読む).しかし今回,需要曲線は同時に,「○○個目のリンゴに対して何円までなら払ってもよいと考えますか」という質問に対する答えになっていることを説明しました(需要曲線を横軸から縦軸に読む).つまり,たとえば下図の需要曲線におけるa点は,「1個60円のとき3個購入希望がある」と読むことができるだけでなく,「3個目のリンゴに対して60円までなら払ってもよいと考えている」と読むこともできるのです.
 同様に,供給曲線は,「リンゴ1個○○円のとき何個まで売りたいですか」という質問に対する答え(供給曲線を縦軸から横軸に読む)を表すと同時に,「○○個目のリンゴをつくるのにいくらかかりますか」という質問に対する答え(供給曲線を横軸から縦軸に読む)になっていることを説明しました.つまり,たとえば下図の供給曲線におけるa点は,「1個60円のとき3個売却希望がある」と読むことができるだけでなく,「3個目のリンゴをつくるのに60円の費用がかかる」と読むこともできるのです.
 注意して欲しいのは,「1個あたりの評価額」「1個あたりの費用」ではなく,「3個目に食べる1個の評価額」「3個目につくられる1個の費用」を表しているという点です.この点,混同しがちなので注意してください.
 さて,以上の解釈をもとにすると,たとえばリンゴが1個60円で3個売買されるとき,社会全体でどれだけの利益が発生しているかを計算・図示することができます.
 まず,消費者の利益(「消費者余剰」と言う)から考えてみましょう.需要曲線から,消費者は1個目のリンゴから金額に換算すると100円分の満足を得ることがわかります.一方で,リンゴ1個は60円で買えるわけですから,差額の40円が消費者の1個目のリンゴからの利益になります.同様に2個目のリンゴからは80円相当の満足を得ますが,やはり60円で購入できますので,差額の20円が利益となります.さらに,3個目のリンゴからは60円相当の満足を得,60円を払いますので,利益はゼロ円となります.
 以上より,消費者が得る利益は金額に換算して40+20+0=60円ということになります.
 次に,生産者の利益(「生産者余剰」と言う)を考えてみましょう.供給曲線より,最初の1個目のリンゴは20円でつくれます.一方,市場ではこれが60円で売られているわけですから,最初の1個をつくることで生産者は差額の40円の利益を得ることができます.同様に,2個目のリンゴは40円でつくることができますが,市場で60円で売れますので,20円の利益を得ることになります.3個目は60円でつくれますが,売値も60円ですので,利益はゼロ円です.
 以上より,生産者が得る利益は40+20+0=60円ということになります.
 さて,消費者の利益と生産者の利益とを合計したものが「社会全体の利益」と定義されることは,上でみたとおりです.したがって,60円で3個売れている状況では,社会全体の利益(を金銭に換算したもの)は60+60=120円になります.
 同じことを,滑らかな需要曲線・供給曲線を想定して確認しておきましょう(→下図).
 需要曲線の下側の面積AODEは,3個消費するときの満足度(を金額換算したもの)の合計を表します.一方,価格線の下の面積BODEは「価格×数量」と同じであり,3個消費するために払う金額の合計です.したがって,この2つの差である三角形ABEが,60円で3個消費する場合の消費者の利益の総額ということになります.

 供給曲線の下側の面積CODEは,リンゴを3個つくるときの費用の合計を表します.一方,価格線の下の面積BODEは「価格×数量」と同じであり,3個売ることで得られる収入の合計です.したがって,この2つの差である三角形CEBが,60円で3個売ることの利益の総額ということになります.

 社会全体の利益は消費者の利益と生産者のそれを合計したものですから,図では需要曲線と供給曲線とに囲まれた部分,すなわちACEの面積ということになります.
 次週(10/13)は,価格規制(○○円以上で売買してはいけない,○○円以下で売買してはいけない)や取引量規制(○○個以上取引してはならない)を行うと,社会全体の利益が減少することを確認します.これをもって,完全競争市場においては自由競争が社会的厚生を最大化することの証左とします.

 次々週(10/20)は,同じ分析道具を用いて,関税等の貿易(を制限しようとする)政策が,社会全体の利益にとってネガティヴな影響を持つことを解説してもらいます.