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いつ頃,どんな状況で読んだのかを加えるようにしてみました.
今後,経済数学,国際経済学(国際貿易・国際金融),国際政治経済学の教科書についても追加していく予定です.
岩田 規久男 『ゼミナール ミクロ経済学入門』 日本経済新聞社(1993年)
読んだ時期:文学部4年の秋〜 数学の知識ほとんどゼロ
この本を手に取った当時文学部4年生だった私が,はじめて「わかった」という実感を得ることができたテキストです.まさに文系出身の初学者が独習することを想定して書かれたようなテキストで,その特徴は以下の3点に集約されます.

 @ 数式をほとんど用いない
 A これでもかというほど丁寧に説明
 B それでいて一通りのトピックをカバーしている

無差別曲線など,類書とは比較にならないほど多くのページを割いて説明しています.
『入門』と題するテキストは,往々にして「広範なことを“知る”」だけで終わるか,「ごく限られたトピックを理解する」に留まるのに対して,この本では「広範なトピックを理解する」ことができます.大部(500頁!)になるのは仕方がないでしょう.
加えて,経済学が「使える」学問であることをそこかしこで“実演”している点も,初学者をとらえる所以ではないでしょうか.公務員試験を目指す文系出身者にもお薦めしたい1冊です.大部ですが説明が丁寧なので,9章くらいまでは意外にすらすらと読めます.
Dornbusch, R., Fischer, S., and Startz, R. Macroeconomics Irwin Professional Pub(2007)
読んだ時期:文学部4年の秋〜 数学の知識ほとんどゼロ
マクロについては,結局英語の教科書がいちばんわかりやすかったように記憶しています.Dornbusch & Fischerは紀伊国屋書店(新宿)の洋書売場に平積みされていて,ペーパーバック版を購入しました.今から10年以上前の話です.きっかけは,野口悠紀雄『超勉強法』で,「経済英語を学ぶのによい本」として紹介されていたのを見たことだったように思います.
実際,英語であることが全く気にならないほど,英語も経済学そのものの説明も丁寧でした.

一般に,外国のテキストは大部であることが多いですが,それは説明が丁寧であることの裏返しです.ここで言う「説明が丁寧」とは,「論理展開を端折らない」という意味です.説明が端折られている教科書は,結局読み手がその部分の論理を自分で展開しなければならず,“初学者には”かなりの負担になります(場合によってはわからずじまいで終わる).したがって,特に諸々の事情で独学で勉強を進めなければならない初学者は,アメリカ式の大部なテキストがかえって効果的だと思います.

追記1:
私はこの本を読む前に,中谷巌先生の『入門マクロ経済学』(第3版)を読んでいました.この本の論理展開は私にはすんなり入ってこなかったのですが,それでも先に読んでいたが故にDornbusch & Fischerの理解が進んだという事実も否めません.

追記2:
アメリカの教科書ですので,GDP等の数値例はすべてアメリカのものになっています.
小島寛之 『完全独習 統計学入門』 ダイヤモンド社(2006年)
読んだ時期:助手時代
助手時代に文系出身の院生に統計学を講義する機会があったのですが,数式展開よりも「それが何を意味するのか」を中心に話したほうがよいと考え,この本に巡り合いました.
とにかく,文系の数学嫌いに徹底的に配慮した内容になっています.

その特徴は,
@統計学の「考え方」を説明することに重きを置いている
A数式どころかxやyなどの文字さえほとんど使われていない
ことでしょう.
さらに,この本のすごいところは,
Bそれでいて,実はかなり高度な内容を含んでいる
ところです.

文系に限らず,初学者が統計学の発想法に触れるのに最適の一冊だと思います.数学に自信がないが統計学を学んでみたいという人,あるいは数式展開はフォローできるがいまいち意味がわかっていないと感じている人は,是非本書を読んでみてください.
宮川公男 『基本統計学』(第3版) 有斐閣(1999年)
読んだ時期:経済学研究科修士1年
文学部を卒業後に経済学部に学士入学した私は,学部時代はミクロ・マクロ・数学の勉強に追われ,統計学の勉強はまったくしませんでした.しかし大学院では計量経済学は必修で,統計学の知識なしでは講義の本質的な部分はほとんど理解できません.そこで,講義と並行して慌てて勉強をはじめたわけですが,この本は数式展開で端折っている部分が少なく,おかげで一歩ずつ着実に論理を積み上げながら読み進めることができました.
また,この本の内容を理解していれば,学部レベルの(=行列を用いない)計量経済学・計量政治学の教科書を問題なく読み進めることができるでしょうし,理解も深まるでしょう.

ただし,おそらく学部初級〜中級を対象とした教科書なので,
@証明が省略されている定理も結構ある
A回帰分析についての叙述が限定的
B行列を一切用いない
など,大学院レベルの計量経済学との間にはだいぶ距離があります.ですので,私自身はこの本を読了した後,速やかに蓑谷(次項),岩田(次々項)と読みすすめました.

注意:
この本には,文系の高2レベルの微分・積分が出てきます.その部分を読み飛ばしても統計学の発想自体は理解できますが,この本のよさは大分損なわれてしまうと思います.私は,この本を読む前に統計学を学んだことはありませんでしたが,統計学で用いる数学については,経済数学の範囲内でそこそこ勉強していました.具体的には,チャンの『現代経済学の数学基礎』の解析の部分くらいは読んでいました.
蓑谷千凰彦 『統計学入門』 東京図書(2004年)
読んだ時期:経済学研究科修士1年
私が最初に読んだ統計の教科書は,前項の宮川公男『基本統計学』(有斐閣)でしたが,これは定理の証明など省略されている部分も多く,大学院の計量経済学(理論)を理解するには足りませんでした.そこで,定理の証明もほとんどフォローされているこの本を次に読みました.必要とされる数学レベルは,経済学の大学院に進学できた人(経済史やマル経を除く)であれば問題ないでしょう.
ただ,行列を用いた記述が少ないので,院レベルの計量経済学(初級)を理解するには,まだ少し物足りないかもしれません.その場合は,次の岩田暁一先生の本まで進むとよいでしょう.

なお,この本の前半部分は前項の宮川と,後半部分は次項の岩田の前半と被る部分が大分あります.なので,今にして思えば,宮川先生の本のすぐ後に岩田先生の本に進んでもよかったかもしれません.
岩田暁一 『経済分析のための統計的基礎(第2版)』 東洋経済新報社(1983年)
読んだ時期:経済学研究科修士2年
蓑谷『統計学入門』を読んだ後に,行列ベースの統計理論を勉強する目的で読みました.
前半で1変数の統計理論が,後半で多変数の統計理論が解説されています.この本のセールスポイントは次の2点だと思います.

@ 証明のプロセスが逐一記されている(=途中を端折っていない)ので,独習でもじっくり読めば必ず理解できる.
A 多変数の統計理論に必須の行列に関する説明の量が過不足ない.

証明プロセスが端折られていないので,時間さえかければ誰でも読みこなせると思います.また,行列の知識もこれだけあれば十分ではないでしょうか.計量理論の専門家を目指す人以外は,何か1冊線形代数の本を読むよりも,計量経済学だけを目的とした記述のあるこの本を読むほうが効率的なように思います.
この本を読み通していた私は,Hayashi, Econometricsの前半部分ならば十分読みこなせました.