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ゼミの記録
2009年10月2日
2009年10月9日
2009年10月16日・23日
2009年10月2日
発表者:原さん
発表内容:教科書 第15講

 「自分が発表する段になって,わからないところ(今までわかっていなかったところ)が明確になってきた」という最後の言葉は至言でした.
 発表することの最大の効能は,自分の理解が深まることだと私は考えています.すなわち,発表は,聞き手のみならず発表者にとってもプラスになるのです.聞き手わかるように説明するためには,相手以上に深く,そして正確に理解していないとなりません.特に,自分が知らず知らずのうちに「あたりまえ」と思って流していた部分が,他人に説明しようとしてみたとき,実はそこまであたりまえでないのだと気づいたりすることがあります.これは,知的進歩につながる重大な発見です.
 皆さんも,わからないと気づいた部分については,教科書を読みなおすなり,他のゼミ生に教えを乞うなどして,しっかりフォローしてください.
 私自身も,自分の論文の発表スライドをつくっているとき,自分の論文の理解が格段に進み,それとともに弱点や欠点もみるみる明らかになり,スライドを作り終えるころにはテンションが大幅に下がるといった経験を何度もしました(笑).

 話は変わりますが,何人かの人は「母平均の区間推定」のロジックについて,夏休みを挟んで完全に忘れているようです.@正規母集団から抽出された標本の平均(標本平均)がどのような分布に従うのか,Aそれをどのように利用すれば母平均の区間推定が可能となるのかについて,しっかりと復習しておいてください.このくらいの知識は,社会科学系学部の出身者であれば今後は常識となるでしょう.教科書を読み直すなり,私の作成した過去の資料を参照するなどして,必ず理解しておいてください.

 それから,区間推定や検定を何らかのデータを用いて実際に行ってみることも,理解を深める重要なステップです.とは言え,ゼミの時間は限られていますので,これは希望者のみサブゼミという形で,近いうちに行いたいと思います.
2009年10月9日
発表者:神田さん,吉井さん
発表内容:回帰分析の基礎
 今日の発表はよくできていたと思います.「よくできていた」とは,@発表者本人が内容を7割以上理解できていて,かつAそれを自分の言葉で説明できていた,ということです.特に,「発表」という観点からは後者が重要なのです.
 ところで,人には言葉を通じてものごとを理解するという側面があります.したがって,自分の言葉で言い換えられるようになってはじめて「理解した」と言えるかもしれません.自分の勉強したこと・考えていることを,積極的に他者に話すよう心がけてみましょう.皆さんの理解が深まることでしょう.
 さて,今回発表してもらった回帰分析とは,2つの変数間の(線形の,あるいは直線で表されるような)因果関係の大きさを,実際に観測されたデータから推定しようというものです.たとえば,「数学能力が英語の成績によい影響を与える」という,《数学能力→英語能力》という因果関係の存在を予想したとします.このとき,「数学の点数が1点高い人は英語の点数が何点高くなるか」を,たとえばクラス30人分の数学・英語の得点から推定しようというのが,回帰分析になります.
 さらに,回帰分析の推定結果が「単なる偶然」である可能性を統計的に判断する手段として,t検定があります.すなわち,本当は《数学能力→英語能力》という因果関係がなかったとしても(=母集団は下図グループAであったとしても),私たちがたまたま@数学も英語もできる人とA数学も英語もできない人ばかりを拾ってしまう可能性があります(下図グループA).
 このとき,これらのデータを用いた回帰分析からは,「数学の点数が1点高い人は英語の点数が0.5点高くなる」というような推定結果が得られてしまうかもしれません.このように偶然偏ったデータを選ぶことで誤った推定結果を得てしまう失敗を,私たちは当然避けたいと考えます.
 ここで,推定結果からある算式に基づいて「t値」というものを計算すると,本来因果関係がないのに「数学の点数が1点高い人は英語の点数が0.5点高くなる」という結果が得られてしまう確率がわかります.この確率が非常に小さいならば,「因果関係がない場合にはほとんど得られないような推定結果が今回得られた」ということですから,「因果関係がないとは言えない(=つまり因果関係がありそうだ)」と判断するのです.
また,このとき「回帰係数は“有意に”推定された」と言います.
 このことからわかるように,たとえ回帰分析から「数学の点数が1点高い人は英語の点数が○○点高くなる」という推定結果が得られたとしても,そこから計算するt値(の絶対値)が小さく推定結果が有意でないならばあまり意味はないのです.
さて,皆さんが回帰分析を実践するには,もう少しだけ理論的につっこんだ勉強が必要です.また,ソフトをまわしてみる必要もあります.これについてはいずれサブゼミでフォローしていきましょう(興味のある人のみ).
2009年10月16日・23日
 卒論で取り上げたいテーマについて,「ざっくりと」語ってもらいました.
 皆さんに共通していることは,以下の通りです.
1「問い」が大きすぎる/明確でない/ない
 秋学期いっぱい使って,卒論で取り組む問いを絞り込んでいきましょう.そのためには,とにかく考え始めることが大事です.考えを進めていくうちに,大きな問いに答える前に解決しなければならない「小さな問い」が現れてくるはずです.実は,それら小さな問の中にこそ,むしろ卒論で取り組むのにちょうどよい(卒論に求められる能力・労力で十分論理的厳密性の担保された回答を出すことができる)ものがあるのが普通です.
 というわけで,とにかく考え始めなければ適切なテーマにたどり着く/絞り込むことはできません.「テーマが決まる→考え始める・書き始める」という順序にこだわらず,ある程度大きな問いを設定しておいて,とにかく動き出すことが重要なのです.
2 読んでいる本が少ない
 学術論文の評価基準のひとつ(しかしおそらく最も重要なもの)は,「過去の研究にどれだけ新しい価値を加えたか」です.過去に行われた研究との位置付けなしにあなたの論文の価値を主張することは,学問のルールを著しく逸脱する行為です.したがって,皆さんは,自分が設定した問いがこれまでどのように取り組まれてきたのか,しっかりと理解し手際よくまとめる必要があります(これを「既存研究のサーベイ」と呼びます).これが,皆さんの論文の最初の数ページ(場合によっては半分くらい)を占めることになるでしょう.
 個人的には,卒論レベルでは,既存研究のサーベイがよくできていれば合格と考えています.特に,(卒業後すぐではなく,いったん就職した後も含めて)大学院への進学を考えている人は,サーベイはしっかり書いておいたほうがよいです.
 とは言え,博士論文や修士論文ではありませんので,最新の研究までフォローする必要はありません.すでに評価の定まった,学部レベルの教科書に記述が出てくるような研究だけで十分です.それらの原典にあたり,しっかりと理解し,自分の言葉で説明しなおし,互いの関係を整理するようにしてください.そのうえで,自分は新たに何を付け加えたいのかを明確にするのです.
読書の秋です.
読み始めましょう,考え始めましょう.