第1章 序論
1-1 なぜこのテーマか
1-2 先行研究
1-2-1 「ヴィジュアル系」アーティストに関する研究
1-2-2 「ヴィジュアル系」ファンに関する研究
1-3 何を明らかにするか
1-4 本論文の構成
第2章 ロックにおける「ヴィジュアル系」の位置づけ
2-1 1960年代のロック――反逆の時代との共鳴
2-2 1970年代のロック――対抗文化の解体とエンターテイメント化
2-3 1980年代のロック――大量消費社会と雑種音楽への変化
2-4 1990年代前半――「ヴィジュアル系」成立前
2-4-1 1990年代の社会背景と「ヴィジュアル系」ブームのはじまり
2-4-2 「名古屋系」
2-5 1990年代後半――「ヴィジュアル系」最盛期
2-5-1 メディア展開と「ヴィジュアル系」スタイルの様式化
2-6 2000年代前半――「ヴィジュアル系」衰退期
2-6-1 ブームの終焉
2-6-2 細分化されたジャンル
2-6-3 海外での活動
2-7 2000年代後半――「ネオ・ヴィジュアル系」の隆盛
2-8 2010年以降――現代の「ヴィジュアル系」
第3章 雑誌の言説に見る「ヴィジュアル系」イメージの変遷
3-1 アプローチ
3-2 扱う媒体
3-3 この論文における時代区分
第4章 「ヴィジュアル系」イメージの形成
4-1 「過激で不良なヴィジュアル系」――1990-1997
4-1-1 アーティスト側の言説
4-1-1-1 「ヴィジュアル系」成立前の共通イメージ
4-1-1-2 「黒いヴィジュアル系」という規範
4-1-2 ファン側の言説
4-1-2-1 「ライヴは恐いもの」
4-1-2-2 大人が抱く「不良」イメージ
4-1-2-3 「黒いヴィジュアル系」の閉鎖性
4-1-3 両者の比較
第5章 ヴィジュアル系「イメージ」の変容
5-1 「弱々しくてかっこ悪いヴィジュアル系」――1998-2002
5-1-1 アーティスト側の言説
5-1-1-1 過激さを失った「弱々しいヴィジュアル系」
5-1-1-2 否定される「ヴィジュアル系」
5-1-2 ファン側の言説
5-1-2-1 「黒いヴィジュアル系」の希薄化
5-1-2-2 見た目だけのファンの登場と応援形態の変化
5-1-3 両者の比較
5-2 「弱々しくてかっこ悪いヴィジュアル系」からの脱却――2003-2007
5-2-1 アーティスト側の言説
5-2-1-1 「ヴィジュアル系」を変えたいという原動力
5-2-1-2 「ネオ・ヴィジュアリズム」の提唱
5-2-1-3 「古き良きヴィジュアル系」の復権
5-2-2 ファン側の言説
5-2-2-1 ファン同士の繋がりの希薄化
5-2-2-2 大人の内部化
5-2-3 両者の比較
第6章 「ヴィジュアル系」イメージの新生
6-1 「何でもありのヴィジュアル系」――2008-2013
6-1-1 アーティスト側の言説
6-1-1-1 「ヴィジュアル系」は音楽ジャンルではないという考え方
6-1-1-2 「何でもあり」から生まれた新形態のアーティスト
6-1-2 ファン側の言説
6-1-2-1 ファン層の拡大
6-1-3 両者の比較
第7章 考察
第8章 総括
8-1 反省
8-2 今後の展望
異なる音楽性を持ったアーティストたちが、偏に「ヴィジュアル系」として知られている。本論文は、一括りにされているこのジャンルが、様々なイメージとともにどのように成立してきたのかを明らかにするものである。そこで、「ヴィジュアル系」の歴史を網羅する雑誌『FOOL’S MATE』を用いて言説を集め、あらゆる立場から抱かれるイメージを分析していくこととした。
言説分析の結果、1990年代前半に個性を主張する方法として始められた派手な装いや攻撃的なパフォーマンスが、過激なイメージを作り出したことがわかった。しかし、黒服に代表される「黒」というイメージに統一されていく過程で、女性的なイメージが強調されることとなる。そうして1990年代末には、以前の「過激なヴィジュアル系」と対照的である「弱々しくてかっこ悪いヴィジュアル系」へとイメージが変化していく。その状況から脱却しようという試みが2000年代前半に行われたことで、「ヴィジュアル系」は「自由」なものであるという開放的なイメージが誕生した。
Although there are many differences in melody, the artists are simply known as “Visual-kei”. This paper attempts to make it clear how this genre has been formed with various images. Therefore, I attended to analyze discourse so that I could reveal the images that have been built up by different positions. Then, I chose to deal with FOOL’S MATE which covers whole history of “Visual-kei”.
As a result of reseach, the extreme image was established in the early of 1990s. It was due to the approach of insisting that they had individuality: For example, dressing themselves in outrageous costumes, making up heavily, and performing aggressively. However, the image changed gradually: The feminal image came to be stood out while Kurofuku-style became to be mainstream in “Visual-kei”. In the end of 1990s, people began to say that “Visual-kei” was a mere formality. It raised the weakly image. Therefore, in the early of 2000s, artists tried to alter that situation. Thanks to this approach, “Visual-kei” came to be recognized as “freedom”. As a result, I can say that the image of “Visual-kei” is being unconstrained.