合宿振り返り
0.8月を受けて

6月の反省では、次の発表までの目標として「言葉に対して抱いている嫌悪感・偏見を和らげ、且つ、自分が扱いたいと思っている言葉の記号性・市場の中で使われる言葉についての基礎知識を蓄える。」というものを掲げた。 結果として、感覚の話なので指標化するのは難しいが、「言葉に対して抱いている嫌悪感・偏見」は、ある程度和らいだと思う。言葉に対する思いを相対化して見たことで、自分の異様さを自覚できたという、小さな一歩は確実に踏み出せた。 しかし重要な後半、「自分が扱いたいと思っている言葉の記号性・市場の中で使われる言葉についての基礎知識を蓄える。」は達成できなかった。課題図書は結局一冊も読了できなかった。 原因としては、発表の構成を考えるに際し、6月に掲げた4冊以外の文献を読んだことで、それらを読む余裕がなかったことが挙げられる。 だが、発表に際して読んだ本の数にしても、その数はたったの2冊である。そのことも含めて反省しなければいけない。
これから課題図書を読んでいく上で、私としてはひとまず「自分のレベルを考慮して、無理のない計画を立てる」ことを気を付けていきたいと思う。 今回の課題では、自分のキャパシティを超えた冊数・図書の計画を立ててしまった。そのことが、自分のモチベーションを下げるきっかけにもなってしまったと思う。 「夏休みなのだし、合宿に向けてなのだから、気合を入れなくては」と考え少し厳しめの設定をしたが、そもそもそれに沿って進めていけないなら計画の意味が無い。 自分のためになる課題設定をしたいと思っている。


1.合宿での発表、振り返り

発表のためにやったこと

・自分の思考と関係していると思われる「構造主義」「ポスト構造主義」の入門書を読む
・ゼミ生に自分の考えを聞いてもらい、意見をもらう
・自分の言葉との向き合い方を振り返り、どう考えていたかを言語化する

発表内容まとめ

・自分が今まで嫌悪していた「言葉」の捉えなおし。私が嫌だったのは、「言葉を適当に使う人」
・「改めて」(←振り返ると、改めて、にはなっていなかったが。)自分の興味があるもの列挙「消費社会・記号的消費・流行・認識論・パラダイムシフト・不気味の谷…」
・「人の心を動かすものは何か?」=「人はいかに物事を受容するか?解釈・受容理論。」
・今までの自分の作品受容に対する考え方=作者ありき。
・しかし、受容理論やオーディエンススタディーズの存在。作品は作者の意図とは離れ、全く違う形で受容されることがある。作者の権力からの逃避。
・考えれば考えるほど、自分の抱いていた「作者ありき」の考えが、現代・まわりとずれたように感じるようになった。
・したがって卒論では、特定のファンを取りあげて、彼らがそれをどう受容しているかを研究したい。

発表に対する突っ込み

・言葉に対する認識から発表の不時着まで、前回の発表と同じことを繰り返している。
・受容理論を引用してくる必要性は?難しく語りすぎでは?
・使っている言葉の定義があいまい。発表者自身も言葉を適当に使っている。
・他の人に、自分と同じことを感じて欲しいと思っているようだと感じる。
・感動は何を以って与えられるのかを考える必要があるが、それは難しすぎる。
・そもそも具体的な研究の対象を定めないと方向性を決めようにも、考えられない。
・この発表は自分の考えを改めたから、あなたもこの考えを認めてください、と言っているようなもの。
・参考文献2冊は少なすぎる。
・発表者が他の意見に耳を傾ける時、上辺では受け入れているように見えても、本当には受け入れていないように見える。

先生から

・一方に偏った考え方に固執している。それで無理矢理まっすぐ歩こうとしている感じ。
・発表者は、感覚や経験なものが絶対だから、他のもの(合宿までにもらった諸々のアドバイス等)を受け入れられない。
・社会を構成する一員として生きている限り、資本主義等、一定の権力からは逃れることが出来ない。それをわかっていない。
・「人の心を動かす」というが、そもそも人は動かせるものではない。人と人とは相互的な関係であることが前提として全くわかっていない。
・「人のことを操作したい」と思っている。

最終日までの課題

・「人のことを操作したい」と思った具体例を挙げる
・自分の考えを周りの人に話してみて、意見を貰うこと


2.最終日発表を迎えるまで

ゼミ生から

・自分がリーダーに立った経験はどんな時?
・言われた意見に飛びついているように見える。ちゃんと咀嚼してる?
・受け取り方が極端。0か1か。
・作品の受け取り方が上から。「わかってあげてる」という感じ。相手の言い分を理解するだけでは本当に理解したことにはならない。それは相手の立場を切り捨てているようなもの。
・適当な態度で返事をしているのが良くない。相手に「わかった」ということはつまり、相手と「約束」すること。

3.最終日

発表内容

「操作したいと思う時」「操作してきた時」「操作されたくないと思う時」の3つに分けて発表。
「操作したいと思う時」
→・ものをつくるとき。自分の思惑通りの反応をして欲しいと思う。
 ・ある程度の規模の集団が、一斉に一つの方向に向かっていくものに興味がある。
 ・自分が考えていることに関して、同じように感じて欲しいし、感じてもらえないと押しつけてしまう傾向がある。

「操作してきた時」
→・周りの人がずっと私を肯定してくれたので、それは私が周りの人を操作してきたとも言える?

「操作されたくない」
→・あらゆる文化作品を受容する時。自分は操作したいくせに、心を操作される(感動を煽られる)のは悔しいと感じる。
 ・メディア機関が流している情報には権力が働いていると感じ、それに操作されるのが嫌。
 ・操作されたくないから、先回りする。「自分と相容れない立場を理解したうえでこのスタンスを取っているので、もうその立場からは否定しないでください」というポーズを取ることがよくあった。

発表を終えて、今後の方針

この発表を終えてからもう一度先生から何がやりたいのか問われた。やはり「ある程度の規模の集団が、一斉に一つの方向に向かっていくもの」への興味があるとお話をし、「全体主義」か「ブラック心理学」の2テーマの提案を頂いた。 結果、「人のことを動かす」ことを目的に置いた「ブラック心理学」を研究することで方針がまとまった。


4.合宿を終えて。感想。

その後2週間程度でブラック心理学の全体像をつかみ、レジュメにして提出した。特に指定は無いが、今後も毎週木曜日、その週の調査結果をレジュメにまとめて報告することにした。
自分の考えの浅さや、頑固さが露呈した合宿だった。自分の頑なさにはある程度自覚があったが、ゼミ生や先生からここまで指摘を受けるほどまでとは思っていなかった。 それらは今まで生きてきた中でも、かなりショッキングなものばかりだった。自分の偏った思考・受容態度をを指摘された合宿から約1ヶ月が経つ今でも、ずっと考え続けている。 卒業論文に限らず、自分の周りの人や思想との向き合い方を考えるきっかけになった合宿だった。