この著書では、アイドルの振付師をしている傍ら自身もアイドルヲタクを自称する竹中夏海が、近年女性アイドルブームが定着する一方女性ファンが存在感を増している現状とその理由について実体験をもとに考察している。第一部では女性がアイドルに惹かれる理由を書き綴り、第二部ではアイドル現場のレポート、女性向けイベントのつくり方の解説、知人や男性アイドルファンとのトークが収録されている。(第一部の詳しい内容はレジュメ参照)
この本は、『アイドル=ヒロイン』というタイトルが付けられているが、現代の女性グループアイドルはセーラームーンに当てはめることができるということを主旨としている、と多くの場合受け取られるだろう。なぜなら全141ページの中で、1/3は女性グループアイドルとセーラームーンの関係性について描かれているからだ。(p27〜p43第一部の第2章「アイドルとセーラームーンの共通点」、第二部p96〜p117「セーラームーン妄想キャスティング会議」、p118〜p137「男性から見たアイドルとセーラームーン」)
しかし私は、「感情移入」というキーワードに注目したい。というのも、その「感情移入」という言葉はこの本のなかに頻繁に登場し、まるでこの単語は必ずテストで出しますよとレジュメでアピールされている暗記必須用語のように重要な役割を果たしているのだ。この「感情移入」という言葉は第一部第1章の2ページ目から登場する。誰かを推している人はある対象にアイドル性(「存在そのものの肯定」)を見出し感情移入しているのではないか、現代女性アイドルはオフの自然体の姿までコンテンツ化されており、それこそが感情移入しやすい理由でもある、「推す」という原動力が感情移入から来ているものだとすればこの物語要素はとても効果的、とあらゆる箇所に散りばめられている。ここで、「感情移入」に注目して読みすすめてみると、女性ファンは女性アイドルをみて「同じステージに立ちたい」、「非現実的な服を着たい」と感じると述べられていることから、女性ファンにとっての女性アイドルは「こうなりたい」という願望の対象であると言える。また、女性ファンは女性アイドルの過去や成長していくストーリーを知り涙したりさらに応援したりするとも述べられていることから、「こうなってほしい」という希望の対象であるとも言うことができる。
したがって、「感情移入」の観点から捉えなおすとき、この本は現代の女性アイドルを女性ファン自身の願望・希望対象と描こうとしているものとして再浮上するだろう。
この著書では、アイドルコラムも担当するフリーライター岡島紳士と現場系アイドルファンの編集者・ライター・コラムニストの岡田康宏が「女性」の「アイドルグループ」に焦点を当てて、AKB48のグループの秘密とアイドル戦国時代と呼ばれる現在のアイドルシーンについて、ビジネス、コンテンツ、メディア戦略、ファンコミュニケーションツールの変遷と合わせて徹底的に分析。70年以降の40年間のグループアイドルの歴史を振り返りつつ、その進化の歴史を追いながら、グループアイドルの今後の歴史を検証、アイドル史を更新するような内容となっている。
この本は、グループのパッケージによる人気を描いているものとして多くの場合受け取られるだろう。なぜならAKB48やももいろクローバー、モーニング娘。、またピンク・レディーやキャンディーズの「売り方」に着目しファンの獲得方法について多く述べられているからだ。
しかし私は、挙げられる個人名の多さに注目したい。というのも、アイドルの個人名はこの本のなかに頻繁に登場し、まるで歴史よりも強調されているように重要な役割を果たしているのだ。ソロアイドルの紹介で個人名が挙げられることは必然的であるが、各グループアイドルの紹介においてもメンバーが一人一人フルネームで挙げられている。紹介されたアイドルのなかでAKB48の次に最も人数の多いグループのアイドリング!!!に関しても20名全員の名が記されている。第二章の58ページで述べられているグループアイドルの利点の一つに「ソロで勝負するにはインパクトの弱いタレントをグループの中で生かすことができ、それによってファンは複数の選択肢があり自分の好みのアイドルを選べる」とある。筆者には各メンバーの人気がグループ全体の人気へつながっているという考えがあるのだ。第一章でもAKB48のメンバーの人気順を可視化した選抜総選挙を取り上げ、1〜10位まで名前と得票数を挙げている。
したがって、挙げられる個人名の多さの観点から捉えなおすとき、この本はグループアイドルの人気をパッケージによる人気ではなく個々のタレントの人気の結果と描こうとしているものとして再浮上するだろう。
この本ではトイ、アニメ、サブカルチャー誌など幅広い分野の雑誌で活動しているフリーランスライターの小田切博がキャラクタービジネスの発生と歴史的経緯、そしてキャラクターの本質を論じている。これ以前のキャラクター論には「文化論」的なものと「産業論」的なものがあるとし、これに対して小田切は「文化としてのキャラクタービジネス」という切り口でキャラクターを捉え直していく。第四章ではアメリカンコミックスの研究も行っている小田切独特の視点で欧米と比較しながら日本型キャラクタービジネスについて語られた内容となっている。
第一章では日本の近代のキャラクタービジネスの歴史や内容について綴りながら、マンガ、アニメ、特撮ドラマといったものが論じられる場合、消費形態についてはほとんど語られないが、この点についてはもっと注意が払われるべきと従来のキャラクター論について意見をする(35頁)。
第二章ではキャラクタービジネスにまつわる制作テーマ、著作権やコンテンツ産業、メディア芸術に触れ、「コンテンツ」ではなく「キャラクター」から国内市場の現状を整理しなおすことで、日本におけるキャラクタービジネスに関する議論の混乱をが解消されると提起している(89頁)。そして二次創作市場に目を向けユーザー参加型の消費は、デジタル化というよりも「キャラクター」の本質に直結しているのではないかとし、第三章につなげる。
第三章で筆者が従来のキャラクター文化論について主張することは、多くの場合「日本独自の文化(現象)」だとする論証が欠落しており、それを裏付けるためには「日本以外」のキャラクターコンテンツの表現や受容状況と国内での表現と受容状況の具体的な比較を行う必要があるということだ。国内の作品や消費傾向の分析のみを根拠とするのでは検証したことにならないと述べる(104頁)。
そして最終章では第三章終盤で整理されたアウトコールトと田河水泡二者の思考の差異から、日米のキャラクタービジネスにおける考え方の違いをまとめている。プロパティーとしてのキャラクターの管理を志向するのがアメリカ型のキャラクタービジネスで、放任を志向するのが日本型だとした(176頁)。
小田切はこの著書で従来のキャラクター論の問題点を挙げ、国内外のキャラクターの表現と受容状況、キャラクタービジネスについて「文化」面と「産業」面から整理をし、今後のキャラクター論の手助けとなる一冊に仕上げた。
筆者のジェラ−ル・キャロンはマーケティング戦略とデザイン開発を結びつけたパイオニアとされ、フランス最大手のデザイン会社カレノアールの創業者である。日本では、オンワード、東武百貨店、デンソー(日本電装)、あさひ銀行、東京オペラシティ、日本ロレアルなどの大手企業のコーポレートマークのデザインを手がけている。ジェラ−ル・キャロンはヨーロッパを中心にテレビ、ラジオ、新聞、雑誌等のマスメディアや、講演、セミナーを通じて、コミュニケーションデザインという考え方の普及に努め、日本には70回以上来日している。そしてこの著書ではフランス文化をベースに、彼の経験や具体例などを用いながらコミュニケーションデザインの考え方を書き綴っている。
第三章では、ブランドやパッケージの構成要素4つ(色、形、文字、数字)を取り上げ、それぞれどのような特徴があり、消費者へどのように影響を与えるのか日常生活の中で目にするブランドやパッケージを挙げながら述べる。なかでも色と形は購買者に強く影響を与えるものであることを強調している。
色は時間の経過に伴って、アルケタイプカラー(基本7色)の普遍的メッセージ、文明や宗教の色としての文化的メッセージ、社会現象の色としてのメッセージ、流行色のファッションメッセージが蓄積されていくとあるが(88頁)、「地域によってメッセージの内容は異なる」と付け加えておくべきだろう。なぜなら、基本7色のオレンジと紫のメッセージは西洋と東洋で異なると紹介しているように、文明や宗教、社会現象、流行は世界各地域によってことなるからだ。となれば111〜112頁で、国際化している現在では各国語に翻訳しなくてはならないようなブランドはデザイン管理が非常に難しい、と述べられているが、商品パッケージの色を考える際には世界各地域の色への印象も考慮するほうが良いということになる。そして筆者は第5章169〜170頁で、アップルコンピュータの社名とかじりかけの林檎のコーポレートマークを評価している。総括すると、世界で多くの人に受け入れられるブランドロゴやコーポレートマークを考える上ときには色・形・言語において国際性、恒久性、柔軟性の3点をクリアーすることが重要と考えていると読み取ることができる。
第1週は目標1に掲げた「大学でメディアを勉強している者としての最低知識をつける。」に対して秋学期のテクスト講読の講義で皆が取り込んでいたベンヤミンの『複製技術時代の芸術』を読むことにした。1篇「複製技術の時代における芸術作品」以降のものは文章が難しく全てを完全に理解することはできなかった。(5点)
2週目は1篇目のレジュメを作成した。節ごとに矢印などを使い整理ができたが、A3サイズにし量を増やし、図などを用いることで第三者もわかりやすいものになったと提出後に反省をした。(10点)
第2週まで取り組み、週(章、本)ごとにこまめにレジュメを作成するほうが良いやり方だと感じたため、週ごとに1冊ずつ本読みレジュメと批評文を作成することとした。
第3週は振付師/ファンによる女性アイドルについての本である。レジュメは第二週の反省を踏まえ見やすくつくることができた。そして目標1に掲げたうちのひとつ、型にはめて批評文を書くことができた。自分が元々興味をもっていた「アイドル性」について論じており参考になった。(12点)
第4週は書く事を職業とする人によるアイドルの本を選んだ。自分が生まれていない時期のアイドルについて詳しく書かれており、知識を蓄えることができた。また、女優だと思っていた人物がこの本のなかでアイドルとして捉えられており、「アイドル」とは何かということについて考え直すきっかけとなった。批評文はこの回も型にはめることができ、レジュメは色や表・図形を用いたことにより一段と見やすくわかりやすく要点をまとめることができた。(13点)
第5週は元々、人気キャラクターの人気の秘密を知りたいと思い課題を設定したが、キャラクターとは何かについての新書を読むことにした。レジュメは特にキャラクターのメカニズムについて論じられている第三章を取り上げ、キャラクターは融通無碍な性格のために変形がしやすいことでコンテンツ化しやすいこと、メディアと社会の変化によりビジネスが盛り上がったことが分かった。またあるものを「日本独自のもの」であることを示すためには日本だけでなく外国とも比較をすることが重要だと学ぶことができた。批評ができず要約を作成した。(13点)
最終週はキャラクターからかなり発展し、企業のロゴ、モチーフのデザインについての本を選んだ。これも元々興味があったテーマである。色が与える印象については知識があったが形に着目をしてこなかったので、今後はブランドロゴの形に注目してみようと感じた。批評は型にはめて書くことができなかった。(14点)
全6週間を終え、本を読み知識を吸収すること、本を読んで要点をつかみ分かりやすくアウトプットすること、批評を書き論じることができた。批評の達成度はまだまだ良いものだとは言えない。レジュメについては成長を感じた。(8点)
感想:週1冊のペースで本を読むことは人生初の経験だったが、興味のある内容だったため全く苦ではなかった。自分とは異なる視点、考え方に触れることができとても有意義だった。今後もあらゆる本を読みキャパシティを増やしながら、卒論テーマを考えていきたい。