<かなこ>



 まず、自分の8分間の発表のなかでは、私が卒論をどのようなテーマで書きどのような調査をしたか、それらを通してわかったこと、できなかったこと、また調査やまとめ方の反省点を発表しました。口頭試問ではどのくらい冷静に自分の卒論を把握できているかが大事なので、もう一度自分の卒論を読み直し、特に、できなかったことを調査についてや卒論の書き方についてなどなるべく細かく挙げるようにしました。
 発表を終えると先生からは、「卒論を一言で表すとなにか」との質問をいただきましたが、私はすぐに答えることができませんでした。実は、例えば「卒論書いてみてどうだった?」といったような漠然とした質問を去年の先輩方が口頭試問でされているのを見ていたこともあり、このような質問をされるかもしれないということを予想して、答えを事前に考えていました。それは、「良くも悪くも自分の力が表れた卒論だった」ということです。しかし、実際に口頭試問の場になってみると、その答えがすぐに浮かんだものの口から出ませんでした。なぜかというと「良かったところ」が何だったのかわからなくなり自信がなくなったからでした。しかし他の答えを考えることもできず、これを答えたところ、やはりその次に返ってきた質問は「良かったのはどんなところ?」でした。事前に考えていたことは、調査の結果はどうであれ明確な目的を持って調査を進めることができたこと、調査したことを余すことなく書けたことなどでした。しかし、口頭試問の場になるとこれらが本当にできていたのか自信がなくなり、あやふやな答えしかできませんでした。
 次に副査・主査からの評価を告げられました。副査からは問いや調査の設定がよかった、資料をいろいろな視点から立体的に見ることができていることがよかった、としたうえで、雑誌の調査をした第4章の後半と「東方神起騒動」を扱った第5章の関係がわからないこと、第6章が第5章の繰り返しになっていること、「雑食ペン」という言葉が日本独自のものであることが説明されていないことなどが、残念だった点として挙げられていました。主査も副査の評価にはほぼ同意見で、さらによかった点として論点を絞れたこと、それぞれの媒体の特徴や制約を踏まえて扱っていること、先行研究もまずまずまとめられていることなどを挙げていただきました。そして私が最も反省すべきことは、夏から3ヶ月ほどのあいだ論文を書くことから逃げ、早くから取りかからなかったことだとおっしゃっていました。実際に調査を始めてからは、自分で考え進めることができたため、逃げていた時間がもったいなかったとのことでした。そして、私は自分の能力をあらかじめ低く見積もることで、自分にがっかりしないようにしているのではないか、とおっしゃっていました。
 これらの評価を受け、まずは論文自体について私が思っていたよりも多くのよい評価を得られたことが素直に嬉しかったです。そして論文から逃げていた時間については、その当時逃げているという自覚のあったときとなかったときがありますが、今から振り返ると確かに私の卒論のほとんどは11月の第7回発表の後くらいからの調査でできていて、それまでの時間を悠長に過ごしてしまったことがわかります。私は昔からテスト勉強や宿題なども一夜漬けでやることが多かったのですが、やはりその癖はここでも改善されず、ゼミ活動を行ってきた1年間で見たら一夜漬けのような取り組みになってしまいました。また、自分の能力を低く見積もることで、自分にがっかりしないようにしている、という言葉は一番心に刺さりました。そのときに先生が例として、サッカーのPKも外すと思ったら外すらしい、自分の能力を信じることが大事、と言っていました。それを聞いて私は小学生のころピアノの先生に発表会の前日に言われた、「今日は、成功する姿だけを想像しながら寝るんだよ。そうすれば絶対に成功するから。」という言葉を座右の銘のようにしていたことを思い出しました。しかし、いつのまにかそんなことは忘れ、もしも失敗したときのことをよく考えるようになっていました。失敗を予測してそのときどうするかの対策を考えることは大事ですが、私の場合は長谷川先生の言葉通り、もしも失敗してもがっかりしないための保険のような考え方をしていたと思います。そういった考え方が知らず知らずのうちに、自分の力を十分に発揮できないようにしていたのだと思いました。
 口頭試問を経て、私はもっと自分に自信を持とうと思いました。もともと、自分が本気で頑張ったことと言えるものにしたくて卒論を書くことを決意しました。卒論を書き終えて振り返ると、できなかった悔しさや情けなさなどが残り、本気で頑張ったと胸を張って言うことはできませんが、いろいろな調査をして卒論を書き上げたこと、それに対していくつかのよい評価を得ることができたことは、自分の自信につながると思いました。そしてこれから持っていく自信が根拠のないものにならないよう、自分のなりたい姿や目標、それを達成するための方法などを常に考え行動できるようにしたいと思いました。