「就活」の社会史――新卒一括採用方式の成立
History of SHUKATSU : 1945-1973
第1章 序論
1-1 なぜ「就活」か
1-2 方法
1-3 本論文の構成
第2章 大卒生における新卒一括採用方式の成立
2-1 本章について
2-2 日本における就職のはじまり
2-2-1 伝統的な職業との断絶
2-2-2 士族の再生産
2-2-3 平民層の進出
2-2-4 流動的な雇用関係
2-2-5 就職とネットワーク
2-3 大正初期
2-3-1 大学生の新卒一括採用の開始
2-3-2 雇用市場の変化
2-3-3 大学・高専の乱造
2-4 大正から昭和へ
2-4-1 第一次世界大戦後 現代社会のはじまり
2-4-2 中流階級=大学出のサラリーマンというイメージ
2-4-3 終身雇用制と年功序列制の確立
2-4-4 脚光を浴びる職業紹介・職業指導
2-4-5 大学による職業ガイダンスの開始
2-5 昭和初期
2-5-1 就職難による就職戦術時代の到来
2-5-2 新卒大学生の採用の制度化
2-5-3 サラリーマンの変貌
2-5-4 軍需インフレ 解決しない大卒生の就職難
2-6 第二次世界大戦
2-6-1 「配給品」となった学生
2-6-2 学生総アルバイト時代
2-6-3 赤い学生お断り
2-6-4 コネが大切
2-6-5 就職手引き
2-7 高度経済成長期
2-7-1 日本的雇用システムの確立
2-7-2 新制大学ブーム
2-7-3 就職戦術論の拡大再生産
2-7-4 青田刈りの流行
2-8 昭和40年代以降
2-8-1 大企業の採用方針の特徴
2-8-2 不可視のキャリア
2-8-3 高校生の間断のない就職
2-8-4 1980年代以降の新規大卒労働市場
2-8-5 1990年代の大学生の新卒採用
第3章 大学生の「就活」
3-1 本章について
3-2 第二次世界大戦後(1945~1951年)
3-2-1 自由になった就職
3-2-2 戦後の就職難
3-2-3 インフレのなかの就職難
3-2-4 経営の合理化と就職難
3-2-5 デフレ化における就職難
3-2-6 アルバイト学生の就職問題
3-2-7 思想穏健第一
3-2-8 旧制大学と新制大学
3-3 ひろがる就職の場(1952~1958年)
3-3-1 思想と縁故の問題
3-3-2 嘘の効用
3-3-3 はびこる就職戦術
3-3-4 大学卒の中小企業進出
3-3-5 実を結んだ中小企業の求人開拓
3-3-6 灰色の季節
3-3-7 好転した就職状況
3-4 採用戦国時代(1959~1964年)
3-4-1 早期化する就職試験期日
3-4-2 お見合い結婚から恋愛結婚へ
3-5 グレーカラーの登場(1965~1971年)
3-5-1 不況ムード到来で就職難
3-5-2 ぶりかえす青田買い
3-5-3 ブルーカラーに採用される大学卒業生
3-6 多様化する企業と就職意識(1972~1973年)
3-6-1 青田買いの自粛
3-6-2 多様化する就職意識
第4章 考察・まとめ
4-1 大学生の「就活」
4-1-1 コネと就職戦術が欠かせない1952年以降の「就活」
4-1-2 早まる就職シーズンにくらいついていく1959年以降の「就活」
4-1-3 変容する「就活」
4-2 ふりかえって
参考資料一覧
【概要】
今私たち大学生にとっては、大学を卒業する前に就職先を決め、卒業するとすぐに働きはじめるという考え方が一般的になっている。このような企業による新卒一括採用方式というのは、日本の大学生の就職において当たり前となっている。私は大学3年生の終りになると皆そろって「就活」をはじめ、それ以外の選択肢はないというような状況に違和感を覚えた。本論文は、この違和感を出発点として、新卒一括採用方式が日本の社会のなかでいつ、どのように成立して当たり前の慣行となっていったのか、そしてこの慣行に大学生の「就活」あるいは大学生自身がどのように関わり、変容していったのかということを明らかにする試みである。
そこで、第2章でまず先行研究をもとに新卒一括採用方式がいかに成立したのかということを確認する。そのうえで、第3章では新卒一括採用方式が大企業だけでなく中小企業にまで広く定着していった第二次世界大戦後の1945年8月から高度経済成長期が終わる1973年11月までに注目し、この28年間における朝日新聞、日本経済新聞、読売新聞の3紙においての大学生の就職に関する記事を見ていくことで、大学生の「就活」の実態とその変遷を明らかにする。そして第4章ではこれらをふまえて、新卒一括採用方式における大学生の「就活」がいかなるものか、考察する。