「坂口安吾作品における『孤独」――『桜の森の満開の下』から読み解く」
Reading the Loneliness in the Works of SAKAGUCHI Ango
第1章 序論
1-1 なぜこのテーマか
1-2 なぜ坂口安吾か
1-3 アプローチ
第2章 坂口安吾の生涯
2-1 作家になるまで
2-1-1 安吾と両親
2-1-2 安吾とふるさと
2-1-3 求道の時代
2-2 新進作家時代
2-3 時代の寵児
2-4 晩年
第3章 『桜の森の満開の下』講読
3-1 作品について
3-1-1 作品選出にあたって
3-1-2 『桜の森の満開の下』
3-2 女との出会い
3-2-1 桜の花の下の怖ろしさ
3-2-2 鈴鹿峠の桜
3-2-3 男と桜
3-2-4 男と女の出会い
3-2-5 女房殺し
3-2-6 男の不安
3-2-7 女と桜
3-3 山での暮らし
3-3-1 都に対する無知
3-3-2 美の魔術
3-3-3 怖れと自信
3-3-4 気がかりの桜
3-3-5 女の苦笑
3-4 都での暮らし
3-4-1 首遊び
3-4-2 男の退屈
3-4-3 空を落とす
3-4-4 帰郷
3-5 桜の森へ
3-5-1 回想の幸福
3-5-2 鬼の出現
3-5-3 男の悲しみ
3-5-4 桜の森の下の正体
3-5-5 桜と化した2人
第4章 男と「孤独」
4-1 男の心の変化
4-1-1 女と出会う前後の男
4-1-2 山での男
4-1-3 都での男
4-1-4 桜の下での男
4-2 女と桜の存在
4-2-1 男にとっての女と桜
4-2-2 美しさ
4-2-3 風
4-3 男の変化
4-3-1 変化とは何か
4-3-2 変化の契機
4-3-3 「孤独」のなれの果て
第5章 考察
5-1 本論文で明らかになったこと
5-2 反省点と今後の課題
第6章 まとめ
6-1 本論文で明らかになったこと
6-2 反省点と今後の課題
坂口安吾 年譜
参考文献一覧
【概要】
本論文の目的は、坂口安吾の作品に描かれた「孤独」を読み解くことである。1947年に発表された小説『桜の森の満開の下』をその対象として定めた。
坂口安吾は幼いときから孤独を感じ、母には愛されなかった。そして母を憎み、海や空、風などの涯のない風景を愛して過ごした。しかし、その裏には母やふるさとへの愛が存在していた。『桜の森の満開の下』には、安吾のそのような孤独観が色濃く表れている。
この作品において「孤独」は、「桜の森の満開の下」という場所として、またその下に吹く風として表れ、人間を狂わせた。そしてその風に怯える山賊の男もまた、自覚はないが孤独であった。彼は美しすぎる女との出会いにより、今まで自分が生きたことのない世界へと足を踏み入れる。最後、彼は女を殺してしまうが、その瞬間に彼は「孤独自体」と化す。「孤独」はまた、山賊の男そのものとして、また悲しみや狂気によって心を動かされ、「孤独」を生き抜いた者にしか見えない美しさとしても描かれていたと考える。