第1章 序論
1-1 家庭教師・吉本への疑問
1-2 映画版『家族ゲーム』の“成功”と「家族」イメージ
1-3 映像資料について
1-4 本論の構成
第2章 映画版『家族ゲーム』の言説
2-1 作品概要とあらすじ
2-2 作品論と言及
2-2-1 コミュニケーションの欠陥
2-2-2 ストレンジャーとしての吉本
2-2-3 『家族ゲーム』の「の・ようなもの」
2-2-4 シークエンスの非連続性
2-3 客体化した「家族」と吉本
第3章 テレビドラマ1983年放送版『家族ゲーム』(TBS)
3-1 作品概要とあらすじ
3-2 沼田家と吉本のふるまい
3-2-1 第1話『ボクの家庭教師は暴力先生・なのダ』
3-2-1-1 家庭教師・吉本登場
3-2-1-2 最初の晩餐
3-2-1-3 沼田家の人々
3-2-1-4 逃げる茂之
3-2-1-5 いじめられる茂之と吉本
3-2-2 第2話『ケンカがこわくて勉強できるか・なのダ』
3-2-2-1 茂之の三者面談 Part1
3-2-2-2 茂之の成績
3-2-2-3 家庭教師・吉本をめぐる沼田家
3-2-3 第3話『いびられたたかれ、でもウレシイぼく・なのダ』
3-2-3-1 慎一とヨシエ
3-2-3-2 慎一のプレッシャー
3-2-3-3 慎一とスケジュール
3-2-3-4 慎一の失恋
3-2-4 第4話『秀才アニキの万引き事件・なのダ』
3-2-4-1 慎一の変化と紀子
3-2-4-2 茂之のラブレター
3-2-4-3 茂之と慎一の成績
3-2-4-4 慎一の万引きと広造
3-2-5 第5話『落ちこぼれのチャレンジ宣言・なのダ』
3-2-5-1 茂之の三者面談 Part2
3-2-5-2 茂之と慎一のクリスマス
3-2-5-3 茂之と土屋と吉本
3-2-5-4 茂之の志望校変更
3-2-5-5 茂之と土屋の決闘
3-2-6 第6話『あばよボクの愛した家庭教師・なのダ』
3-2-6-1 無責任
3-2-6-2 茂之と土屋の会話
3-2-6-3 茂之の睡眠不足
3-2-6-4 家庭教師・吉本の泊りこみ
3-2-6-5 最後の晩餐
3-2-6-6 家庭教師・吉本と沼田家のその後
第4章 テレビドラマ1984年放送版『家族ゲームⅡ』(TBS)
4-1 作品概要とあらすじ
4-2 殿村家と吉本のふるまい
4-2-1 第1話『ボクに抱きつくヘンな家庭教師・なのダ』
4-2-1-1 家庭教師・吉本登場
4-2-1-2 殿村家の人々
4-2-1-3 吉本と殿村家と殿村組
4-2-2 第2話『たんたんタヌキの中間テスト・なのだ』
4-2-2-1 愛のホームルーム
4-2-2-2 茂之の中間テスト
4-2-2-3 吉本のアルバイト生活
4-2-3 第3話『レイプされたのはボクの先生・なのダ』
4-2-3-1 優秀ノート品評会
4-2-3-2 茂之のかつあげ
4-2-4 第4話『アニキを悩ますピンクのブツブツ・なのダ』
4-2-4-1 豊小便事件
4-2-4-2 愛のホームルーム
4-2-4-3 豊失踪事件
4-2-5 第5話『落ちこぼれがクセになりそうなボク・なのダ』
4-2-5-1 豊と和人の中間テスト
4-2-5-2 和人の点数
4-2-5-3 和人のマラソン大会
4-2-6 第6話『先生とアニキのトルコ行進曲・なのダ』
4-2-6-1 豊と泰子
4-2-6-2 豊と風俗
4-2-6-3 豊の家出
4-2-7 第7話『思春期にめざめてしまったボク・なのダ』
4-2-7-1 殿村組の儲け話
4-2-7-2 和人の三者面談
4-2-7-3 高校の非行防止策
4-2-7-4 殿村組と吉本の儲け話
4-2-8 第8話『ボクのハチャメチャ家庭内暴力・なのダ』
4-2-8-1 和人の「のぞき」と豊のバイク
4-2-8-2 和人の志望校と豊のバイクスクール
4-2-9 第9話『ボクをまどわす秋祭りのユーワク・なのダ』
4-2-10 第10話『内申書グルッと回ってタヌキの目・なのダ』
4-2-10-1 殿村家の受験準備
4-2-10-2 和人の成績
4-2-10-3 吉本のプレゼント
4-2-10-4 和人と豊の受験直前
4-2-10-5 豊の願書提出
4-2-11 第11話『愛を責めずにセイ・グッバイだぜ・なのダ』
4-2-11-1 家庭教師・吉本の泊まりこみ
4-2-11-2 最後の晩餐
4-2-11-3 和人と豊の卒業式
4-2-11-4 家庭教師・吉本と殿村家のその後
第5章 テレビドラマ2013年放送版『家族ゲーム』(フジテレビ)
5-1 作品概要とあらすじ
5-2 沼田家と吉本のふるまい
5-2-1 第1話『君は成績を上げたいと思うかい?異常なる家庭教師が弟を壊す』
5-2-1-1 家庭教師・吉本の「家族面談」
5-2-1-2 吉本と茂之のゲーム Part1
5-2-1-3 騙された茂之
5-2-2 第2話『弟が家庭教師の犬になる!』
5-2-2-1 吉本と茂之のゲーム Part2
5-2-2-2 茂之のいじめ
5-2-2-3 茂之の遺書
5-2-3 第3話『誕生日会に家庭教師がクラス全員招待!』
5-2-3-1 茂之の誕生会の準備
5-2-3-2 誕生会のサプライズ
5-2-3-3 「吉本荒野を訴える会」
5-2-4 第4話『弟にラブレター??家庭教師強引にデートを仕込む!』
5-2-4-1 慎一とマキ
5-2-4-2 茂之と真野さくら
5-2-4-3 茂之のデート
5-2-4-4 吉本のゲーム
5-2-5 第5話『慎一は沼田家が生み出したモンスターだ』
5-2-5-1 吉本の「家庭教師記録」
5-2-5-2 慎一と真希
5-2-5-3 吉本の「家族」論
5-2-5-4 茂之と園田の勝負
5-2-6 第6話『緊急家族会議!議題は家庭教師解雇の件』
5-2-6-1 茂之と沼田家
5-2-6-2 慎一と吉本
5-2-6-3 慎一の「家族会議」
5-2-6-4 佳代子の株の損失
5-2-7 第7話『沼田家崩壊は3年前から始まっていた!母佳代子の絶望』
5-2-7-1 佳代子と沼田家
5-2-7-2 一茂と慎一
5-2-7-3 借金の返済方法
5-2-8 第8話『家庭教師による家族ゲーム、結果発表!』
5-2-8-1 一茂と沼田家
5-2-8-2 一茂の借金返済方法
5-2-8-3 吉本の「結果発表」
5-2-9 第9話『吉本の衝撃の過去!崩壊の先に…』
5-2-9-1 慎一と沼田家
5-2-9-2 慎一と沙良
5-2-9-3 吉本の過去
5-2-10 第10話『あの男が家庭教師になった理由~彼は誰を殺したのか?』
5-2-10-1 家庭教師・吉本、再び
5-2-10-2 慎一と吉本の過去
5-2-10-3 慎一と「家庭教師記録」
5-2-10-4 沼田家の変化
5-2-10-5 慎一と田子雄大
第6章 結論
6-1 『家族ゲーム』に生きる家庭教師・吉本
6-1-1 異人としての吉本と「家族」
6-1-2 媒介者としての吉本
6-2 おわりに
6-2-1 当初の目的と明らかになったこと
6-2-2 不足点
6-2-3 振り返り
参考資料一覧
【概要】
本間洋平の小説『家族ゲーム』は、吉本という名前の家庭教師を雇う家族の物語である。この小説は7回映像化されており、そのうち現在視聴できる作品は映画版、テレビドラマ1983年放送版、1984年放送版、2013年放送版の4作品である。3つのテレビドラマ版の家庭教師・吉本は「家族」が共有する「あたりまえ」に対して共感を示さず、吉本の視線によって「家族」は「否定的」に描かれる。しかし家庭教師・吉本とかかわる「家族」の成員は一方的に否定的に描かれるだけでなく、自らが信じてきた「あたりまえ」と自らの習慣、そして家庭教師・吉本に対する態度に自ら変化を示していく。本稿では「家族」にとっての家庭教師・吉本の在り方を探る。
まず映画版の言説において、映画版『家族ゲーム』の受容のされ方を明らかにし、次に各作品における「家族」のイメージをシークエンスに分類して探った。最後に3つのテレビドラマ版における相違点と共通点を踏まえ、家庭教師・吉本とは「家族」にとって「異人」であることが明らかになった。