シャンクス
~第1回、第2回発表振り返りレポート~

 第1回発表では、先生から「自分が関心・興味のあること」と「それがどのように面白いの か、どのようなものなのか」について発表するように言われた。そこで私は、熱を注いでいる中 でも一番皆に知ってほしいと思った「ディズニー」について発表した。なぜなら、このとき具体 的には決まっていなかったものの、「ディズニー」についての卒論を書きたいと考えていたから であり、また一番熱弁できる題材だと思ったからだ。私は仲良しのいとこと定期的に東京ディズ ニーランドに行ったことをきっかけに、小学校低学年頃からめきめきと「ディズニー」を好きに なっていった。今では、大金を惜しまずつぎ込んでいる対象でもある。

 準備段階で「ディズニー」の何について話そうか考えているうちに、テーマパークのショー やパレード、着ぐるみ、アニメーション、悪役など次々に話したい項目がでてきた。とにかく 「ディズニー」が好きであることを伝えたいと考えていたため、45分という発表時間内で話せる だけの項目を話した。しかしその結果、ひとつひとつの内容が薄く、項目同士のつながりも整理 されないまま発表をしてしまった。そのため、聞いている側からすると私の言いたいことがわか りづらい発表だったと思う。またアニメーションについては映像技術による魅力(3次元的な奥行 きをもたせることができる特殊な装置、マルチプレーン・カメラなど)を伝えたかったが、技術に ついての知識がほとんどない状態だった。そのため、案の定かなり曖昧な説明の仕方をしてしまった。 事実があるのに、自分でよくわかっていないものを人に伝えるのは自分の為にならないし、 聞いている人に対して失礼なことだったと反省している。

 そして第1回発表で全員が先生から言われたのは「もっと率直になること」であった。 また「結論付けること」はその逆の行為であるとも言われた。それは、結論を決めつけてしまう とそれ以上考えられなくなり、率直な疑問などが押さえつけられてしまうからだ。実際に私は 第1回発表で結論付けることばかりしてしまった。例えば、「悪役が好きなのは個性としぶとさが あるから」などである。実は発表に備えて話す内容を考えているときに、何度も「好き」の理由が 上手く説明できない事態に陥った。このように、本当は簡単に「好きな理由」を言うことができな いはずなのに、「たぶんこれだろう」と思った内容で決めつけてしまった。それは結果として、 考えることの停止につながってしまうのだと思う。

 また、他のゼミ生の発表を聞いていて気が付いたことがある。それは、「関心や興味のある こと」が「どのように面白いのか」を語っているよりも、それが発表者にとってどんなものなのか、 という「発表者と関心・興味の関係」や「これまで関心・興味が、どのように発表者にかかわって きたか」について話している方が面白いということである。それは、関心や興味の対象という単なる うわべではなく、その人の本質に迫っているような感じがしたからだ。ぼんやりではあるが、 第2回発表ではそのように、題材が私にとってどんなものなのか話すことを意識したいと考えていた。

 そして5月の間しばらくは、第2回発表のテーマを前回同様「ディズニー」にするか他のものに するかで悩んでいた。しかし「ディズニー」について卒論を書いたとしたら、その後自分は 「ディズニー」をどうしたいのか(どう接したいのか)がよくわからなかった。 「本当に自分はこのまま好きなものを卒論としてとりあげていいのだろうか」「それは本当に私自身の ためになるのだろうか」などとしばらく考えていた。またこうして悩んでいるうちに、私が残りの 学生生活をかけて書く卒論なのだから、もっと何か自分にとって切実なことを書きたいと思うように なっていた。このことは第1回発表では考えられていなかったことである。

 そうして第2回発表の出発点を「人から『かっこいい』と言われてとてつもなく嬉しい自分」 に選んだ。この発表テーマにしたきっかけは、実際ゼミ活動中に私が「かっこいい」と言われて 思い出したことである。思い返すと、私は小学生低学年頃から「かっこいい」人への憧れがあり、 漫画やアニメなどで「かっこいい」と感じたキャラクターに熱狂していた。また、熱狂していた 頃だけでなく現在でも、実際に自分が「かっこいい」と思う言動を意識してとったりもする。 このように「かっこいい」という概念は、今の自分のあり方のようなものを決めている要素でも あるので、自分にとって切実なことにつながっていくだろうと考えた。

 発表内容は、「かっこいい」人に対して憧れを抱くようになったきっかけや、憧れの対象と して新たに「クールビューティー」という言葉が当てはまる人が登場したこと、「かっこいい」 人・「クールビューティー」な人になるために自分がやってきた言動(例えば、座っているときに 脚を組む、ヒールを履く)などである。

ところが、「かっこいい」や「クールビューティー」というあやふやな概念について考えて いるだけでは、卒論で明かしたい「切実な何か」が全くみえてこなかった。そこで第1回発表から 考えた「発表者と関心・興味の関係」を意識し、とにかく「かっこいい」や「クールビューティー」 と私の関係を洗い出した。そして私がやってきた「かっこいい」・「クールビューティー」な 言動をひとつひとつ、いつどんな場面でやってきたか考えたところ、性別や上下関係など相手と 自分の関係の違いによってふるまいが変化していることに気が付いた。例えば、意識して声を低く することは、女性の前ではやっても男性の前ではやらない、などである。そこから卒論のテーマとして、 「なぜ対する人によってふるまいが変わるのか」と、それを通して「憧れの姿になろうとしている 私はなんなのか」を扱いたいと考えた。これは他人からの評価を必要以上に気にしたり、対人関係で 悩み続けてきた私にとって、確かに切実なことなのだ。

 第2回発表で良かったと感じているのは、「『かっこいい』と言われてとてつもなく嬉しい自分」 という出発点からすぐに想像できるような卒論テーマ(例えば「『かっこいい』とは何なのか」など) にはならなかった点である。このように出発点から卒論テーマに導けたのは、第1回発表とは違い、 「結論付ける」ことをせずに考えていったからだ。私は発表の準備として、卒論テーマという一先 ずの着地点がわからないまま、むしろ変に着地点を決めようとせずに、ひたすら思うことを紙の上に 並べていった。そうすることで、今までみえていなかったことに気付き、卒論テーマに無理なくつな げることができたと思っている。先生から「やっと出発点に立った」という言葉を頂けたのも、 恐らくこのことからなのではないかと思う。

 しかし問題は山積みだ。まだ私は「かっこいい」や「クールビューティー」といった言葉を主観 でしかみられていないので、学術的な目線で客観視しなければならない。そのためにはこうした 概念の歴史を知る必要がある、と先生からアドバイスを頂いた。ただし注意しなければならない のは、それは概念としてある曖昧なものなので、実体や本質でとらえてはならないということだ。 今は「かっこいい」という言葉が自分の中で想像したものでしかないので、とにかくまずは本を読んで、 学術的にはどのようにとらえられているのか把握しなければ始まらない、と考えている。 また、第2回発表では自分について考えきれなかった箇所がいくつかある。例えば、自分が 「かっこいい」と思ってやっている言動などは実はもっとあるはずなのだが、自分を客観視できず、 あまり出せなかった。周囲の人から私について洗いざらい聞きだすことも必要だと思う。そして、 今の段階では「かっこいい」と「クールビューティー」とのつながりが不明で、かなりぼんやりして しまっている。これももっと自分の過去を探って、どのような関係にあるのか、社会など外部との 関係も含めて広い視野でとらえたい。

 最大の反省点は第2回発表で提出した目次案である。何を書いたら良いのか、まったくわからず、 思いついた言葉を並べただけのような、中身のない目次案を提出してしまった。それはテーマを探る にあたって、何が必要なのかをまったく把握できていなかったからだ。これからは、自分がどんな 学術の視点からテーマについて考えたいのか、ひとつひとつ丁寧に整理していこうと考えている。 これはまだどうしたらよいか、かなり悩んでいるところなので、他のゼミ生やときには先生と 相談しながら考えたい。

 もちろん今ある卒論テーマは断定しないでおきたい。対人関係でのふるまいを考えたいという ベースはあるが、これから勉強や考察を重ねていくうちに出てくる考えを反映できるように、 やはり「結論付け」はせず、ある程度広く視野をもっておきたいからだ。そうはいっても、 もう次の発表まで1か月と少ししかない。第2回発表では準備にとりかかるのが遅かったという 反省点もあるので、これからは毎日卒論について考えていくことにしたい。そしてできる限り 他のゼミ生と話して、卒論を考えるうえでの視野が狭まらないようにしたい。そのためには、 執筆の力となる普段のゼミ活動においても幅広い視野を意識して取り組みたいと思う。