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~第3回発表振り返りレポート~

 第3回ゼミ内発表は、8月4日から6日にかけての夏合宿の場で行われた。この合宿では、各々が自身 の卒論で書きたいテーマについて発表をし、実際に卒論で扱うテーマと題材をこの場で決定できることが 望ましかった。なぜなら、その後の夏休みを各自がどのように過ごすべきか、具体的に考えていくことも 重要であったからである。
 しかし、私は今回のゼミ内発表を前に、自分が扱いたいテーマがいったい何であるのか、はっきりとし ない状態であった。前回の第2回発表では、サブカルチャーや60~70年代の若者文化について取り上げたい と言って目次案を作ったが、結局何を明らかにしたいのかはっきりしていない状態で苦し紛れに作ったも のであった。そのため、今振り返って見てみるとかなり恥ずかしい代物になっている。今になって考える と、このとき私がこれらのテーマにこだわっていたのは、春休みに読んだ『60年代のリアル』(佐藤信著、 ミネルヴァ書房、2011年)や『広告都市・東京』(北田暁大著、筑摩書房、2011年)に書かれていた都市 像をイメージとして捉え、そこに憧れを抱いていたためだったのだと思う。なぜなら、その時代には、 「ジャズの雰囲気」や、「サブカル都市」というものがあったことがうかがえたからだ。だが、そのよう な憧れを抱いていた自分に対して、次第に疑問を持つようになっていった。7月の頭ごろ長谷川先生に 「ユーミン(※1)は貴方の好きな時代の歌手だよ」というようなことを言われたことがあった。そのとき に、確かに私はユーミンが好きだけれど、特別詳しい訳でもなく、そもそも私が興味のあった70年代にヒッ トした人だなんて認識はそれまでなかった。そのとき、実際私はこの時代に流行ったものに詳しかったり、 それを好きだったりするわけではなく、ただ単に本で読んだイメージに憧れを抱いて卒論で取り上げたいと 言っていたのだと思った。同時に、自分がこだわっていたことが、とてもちっぽけなものに思えてきた。 かといって、他に何かこれというものが思い付くまで掘り下げることができず、なんとなく今まで取り上 げてきた「サブカル的なもの」や「サブカルチャー」を捨て切れないまま、今回の発表までずるずると来 てしまった。そして、第3回の発表では、「サブカル」と「サブカルチャー」の比較というかたちで目次案 を作成したが、自分でも卒論で何をやったら良いのか本当のところはよく分からず、まとまりのない発表 になってしまった。発表した内容を具体的に挙げていくと、以下の通りである。

【1. 過去2回の発表を振り返って】  第1回発表では自分が好きなものや人物を中心に取り上げたこと、第2回発表では前回の発表から引き続 いて自分が最近気になっていることや考えたことと、自分の興味に関連すると思った文献からの引用を取 り上げたことを振り返った。
【2. 自身の大学生活を振り返る】  自身の大学生活について振り返ったことを発表した。自分が都市やサブカル的なものを強く意識するよ うになったのが、大学生になって上京してきてからであると思ったため、その過程を振り返ってみようと 思った。同級生からの影響やファッション雑誌を熱心に買っていたこと、ジャズ教室に通うようになって からの心境の変化などを話した。
【3. 8月2日、都市を探索した】  合宿前の休日に東京都内を探索して撮影した写真を見てもらいながら、そのときの様子や感想を話した。
【4. サブカルチャーについて調べる】  「サブカルチャー」「サブカル」という言葉について、『世界大百科事典』(平凡社)と『東京大学 「80年代地下文化論」講義』(宮沢章夫著、白夜書房、2006年)という文献から調べたことを述べた。 これらを調べたのは、今まで「サブカルチャー」や「サブカル」という言葉をなんとなく自分の感覚だけ で使っていたため、きちんと文献にあたって調べてみようと思ったからだった。

 【3.】で発表した、都市の探索に行こうと思い付いた理由は、渋谷や原宿、中野、高円寺など、街 ごとに特有の雰囲気があったり、歩行者の服装の違いがあったりするのではないかと思い、それを自分の 眼で確かめてみたかったからである。しかし実際に足を運んでみると、特にこれと言った違いが見いだせ るわけではなかった。また、ゼミ生に意見をもらうなかで、「そのようにイメージで街を見るのはなぜな のか」という指摘をもらい、そこで初めてそのことを考えた。そしてふと考えてみると、それは自分がか ねてから読んできたファッション雑誌の影響であり、その記事に描かれている街の紹介などを読んで、そ のような都市に対するイメージを持っていたのではないかと思った。この探索に関して先生からは、「こ のように街を探索するフィールドワークは、何を目的にして行うのかを明確にしないとやっている意味が 分からなくなってしまう。これをやったこと自体は悪くないが、具体的に何を見たらいいのか分からない から、仮に街ごとにちがいがあったとしても分からないと思うよ。」という指摘をいただいた。実際に渋 谷から原宿、中野、高円寺とはしごしていくなかで、だんだん何を写真に撮ったらいいのか分からなくな り、後半の2つの街にいたってはただ散歩するだけになってしまっていたため、本当にその通りであると 思った。
 発表後のディスカッションで、ゼミ生や先生からは、「『サブカル』という言葉に集約していて、具体 的にどこを扱いたいのか見えてこない」「イメージや感覚で日常を捉えているため、もっと具体的に考え ていく必要がある」といったアドバイスをいただいた。加えて先生から、3日目に行う「リベンジタイム」 (※2)の課題として「サブカルチャーにかかわらず、自分に関係する具体的なものを10個考える」とい うものが出された。その後、リベンジタイムの発表で私が実際に挙げたのは4つ程度であったが、吹奏楽 をやっていたことやジャズ教室に通うようになったきっかけなどを中心に話した。そのとき先生からは、 「ようやく話し始めた」という感想をいただき、もう少し考えしっかり模索をすることが大事というアド バイスをいただいた。
 現在は夏合宿、夏季集中講義が終わり、一段落して夏休みに入っている状態であるが、自分と関わるも のを具体的に挙げ考えていくことをしながら、それを他のゼミ生にも聞いてもらうことと、それと並行し て『メディア文化論』などのメディアに対する知識の基礎となる文献を読み進めることを行っている。
 自分と関わるものを具体的に挙げて考えていくときには、今までこだわってきた「サブカルチャー」と いう言葉はいったん端に置いて、もう一度まっさらなところから考え始めている。結局、私はこの春学期 のあいだ、「サブカルチャー」という言葉の意味をただ漠然と捉えているだけで、それ以上深く掘り下げ ていくことができなかった。そのため、この言葉を頼ることはやめて、もっと自分自身の経験や思ってき たことから、テーマや題材になるものを探っていくべきだと思った。そうして今現在挙がっているものを いくつか挙げると、好きな歌手や演奏家、料理人などのインタビューやドキュメンタリーを見ることが好 きなこと、かつてtwitterやfacebookなどのSNSに入れ込んでいた時期があったことなどがある。これらが まだ直接、卒論のテーマや題材につながっているわけではないが、8月中はもう少しこの模索をしていく 作業を続けていくつもりである。

※1 ユーミン…松任谷由美。旧姓名は荒井由美。日本のミュージシャンで、1972年から現在まで日本 のポピュラー音楽シーンで活動を続けている。
※2 リベンジタイム…合宿は3日間かけて行われ、そのうちの2日間をかけてゼミ生が発表を行い、そこで 先生から各自に課題が出された。そして残りの3日目に「リベンジタイム」という時間を設け、その課題に ついて用意したことを各自が発表した。