もこ
~第3回発表振り返りレポート~

 第3回発表は8月4日から6日にかけての夏合宿で卒論のテーマ決定を目標に行われた。 結果からいうと私は今回の第3回発表で『乙女系作品にみる女性の性的欲望』というテーマと仮目次案を決定し、 今後卒論執筆に取り組むこととなった。ここではその第3回発表とその準備過程について述べていく。 その前にまずは過去2回の発表のことを話したい。

 過去2回の発表で私は、岡本信彦<*1>などといった男性声優、乙女ゲーム<*2>、夢小説<*3>、 シチュエーションCD<*4>、アニメなどを自分の都合よく、『乙女系ジャンル』とひとまとめにしていた。 またそれらをジャンルとして曖昧に捉え、好きなところや良い面を自分とつなげて考えているだけだった。 第2回発表では、自分の過去の恋愛と『乙女系ジャンル』を無理やりに結びつけて考えていた。 そのため考えても考えても『乙女系ジャンル』と自分を切り離すことができなかった。 第2回発表後に長谷川ゼミの卒業生である先輩に「対象が好きという状態から抜け出して、嫌いになるくらい 考えないと卒論は書けないよ」というアドバイスを頂いたが、考えても好きになるばかりで、嫌いになる なんてもってのほかの状態だった。一方、先生から「正常に進化している。」という講評を頂き、 自分の過去を振り返り、掘り下げたのは無駄ではなかったと少し自分に自信が持てた。 しかし自信を持てたのは良いが、掘り下げるだけでは甘かった。そのため第3回発表の準備では、 自分の過去を振り返り掘り下げ、その中で自分がずっと感じてきた疑問や不安、違和感から 考えていくことにした。

 第3回発表の準備において心掛けたことは、「忙しさを言い訳にしない」ということだ。 第2回発表ではHP制作などによる忙しさを言い訳にしていたため、文献にあたったはいいが 1冊を浅く読んだだけで、ゼミ生とも卒論についてろくに話をしなかった。今回は夏季集中講義の 準備などもあり、第2回発表の時よりも忙しかった。その忙しい中でも時間を見つけて人と話すことはできる。 今回の発表準備は、とにかく人と話すことに重点をおいて進めた。また私は世間話の中でもゼミ生たちに、 自分のことを一方的に話している。だから特に自分の話をすることを申し訳ないと思わないし、 その分相手の話も積極的に聞き、コメントやアドバイスができるよう努めた。その結果、今回の発表準備の過程では、 今まで知らなかったゼミ生たちの新たな面をたくさん知ることができたように思う。また今回はゼミ生以外の 友人にも積極的に話を聞いてもらった。ゼミ生以外の人と話すことで、非常に新鮮な話や意見を聞くことができた。 しかし発表準備において苦労したことは、ノートに自分の考えをまとめる作業だ。私は以前からノートとペンを 持って考えることが非常に苦手だ。話したことや、考えたこと、もらった意見などをまとめる際、瞬時にノート にまとめることができないのだ。卒論について考える時も、それ以外の時も私はノートとペンを用い、まとめる 段階をすっ飛ばして、Wordでレジュメなどの打ち込みをしてしまう。一方私は口を動かしながら考え、話すこと は得意で、その時が一番私の脳がフル回転していると思っている。ただそれをノートにおこそうと思うととまっ てしまうのだ。話すことが得意という意味からみれば、今回の「とにかく人と話す作戦」は成功したように思う。 しかし今回の発表準備のために卒論ノートを新しく用意したのだが、ノートに自分の考えをまとめるのを諦め、 結局見開き4ページ程度しか使わなかった。ノートとペンを持って自分と向き合って考えることが今後の私の課題である。
 第3回発表では『女性の性的欲望とは何か―乙女系作品にみる女性の欲望』というテーマについて発表した。 私は今まで他のゼミ生と話している時、自分でも無自覚に乙女系作品に雁字搦めになっていたそうだ。 そしてその範疇から抜け出せずにいたため、7月頃から度々、ゼミ生から「乙女系作品から離れた方がいいんじゃない?」 と言われたことがあった。私はゼミに入った理由が乙女系作品について何等かの形でアプローチして明らかにしたい、 という一心だったため、その一言を言われたことがとても悔しかった。その時、「意地でも乙女系作品で卒論を書い てやる」と自分を奮い立たせた。今振り返れば当時の私は「どうしても乙女系作品で卒論を書きたい、書くのが当た り前だ。」と非常に頑固になっており、周囲の人の意見を否定的に受け入れていることが多かったように思う。
 その後そこから、ただ今までのように乙女系作品について思ったことや自分について話すだけでは雁字搦めになる だけだと思い、「自分と乙女系作品が今までどのように関わってきたか」「その関わりの中で感じてきた疑問」を話 すようにした。そうすると疑問はたくさんでてきた。ここでは発表でも挙げたその中の3つをあげる。
 一つ目は、今更ここでいうのも憚れるが、私は乙女ゲームが好きで、全年齢対象のものだけでなく、 成人指定のものもプレイする。そして、それら乙女ゲームを買う際に周囲に対して「恥ずかしさ」や 「うしろめたさ」がある。それが特に顕著なのが、成人指定のものを対象にした時だ。それはなぜか。
 二つ目は、乙女ゲームやシチュエーションCDに関して言えば、全年齢対象の作品にもかかわらず、 当たり前に性描写を匂わせるシーンが盛り込まれているものが最近急増している。なぜ今これらが急増しているのか。
 三つ目は、私自身の話だが中学生の時から裏夢小説<*5>を読むのが好きで、自分は変態なのではないか、 と自分に対する嫌悪感や疑問を持っていた。このように、私は性について興味がある。その一方で私は自 分が「純粋」であるとふるまおうとする。中高生時代に性に関する話題があがると、私は「なにそれ?私 わかんなーい。」というように純粋に見えるようにふるまっていた。なぜ私は自分の心の中では性につい て興味津々なのに、「純粋」に見えるようにふるまうのだろうか。
 これらの疑問や違和感を探るための参考文献として、守如子著『女はポルノを読む―女性の性欲とフェミニズム―』 (青弓社、2010年)にあたり、考えていった。そしてそれを通して考えたことを発表した。しかしその際発表した私の 考えは、すっかり参考文献に書かれている内容に影響されてしまい、非常に偏ったものになっていた。私は周囲の人に 「この本に影響され過ぎていてどうしよう!」と言っていて、気づいていたにもかかわらず、文献に書いてあることを 鵜呑みにしていたのである。その例として挙げられるのが、ジェンダー研究をしている女性によって書かれた女性を過 剰に意識しすぎたこの文献を読んだことで、女性の性的欲望と男性の性的欲望を二分してしまっていた点である。先生 からは「このテーマでやっていいのでは。しかし自分の経験に偏りすぎていて、自分の思い込みで男性と女性を単純化 している。男性の欲望が女性の欲望の中にあり、そこから女性の欲望が生まれる。女性の性的欲望は男性の性的欲望を 媒介している。」という講評を頂いた。参考文献に書かれている内容で頭がいっぱいだった私にとって、この先生の講 評はハッとさせられるものであった。読み進めていくうちに、参考文献の著者である守如子と私に似た部分を感じ、考 えを照らし合わせるようになっていた。その原因は私がフェミニズムやジェンダーについて無知であった点も挙げら れるだろう。今回の発表ではフェミニズムやジェンダーについての文献はほとんどあたることができなかった。そのた め、自分の経験や文献に書いてあることに依存した発表になってしまった。
 また私が参考文献に用いた本はいくつかの論文を集めたものであり、私がレジュメに引用した文章が守如子の論文で はないところだった。そのような論文集であったにもかかわらず、私は論文集そのものしか参考文献としてあげていな かった。次の発表ではこの点は絶対に気を付けたい。こうして私は先生からの講評とともに、合宿の最終日までに「目 次案の改変」と「卒論の概要文の3行要約」の2つの課題を頂いた。私は2日目の発表が終わると、最終日まで時間がない にもかかわらず、疲れ果てて夜は早々に寝てしまった。これは皆と話ができる機会と2つの課題に取り組む時間を無駄に したということで深刻な問題であった。
 最終日の朝から必死になって、先生から頂いた2つの課題に取り組み、リベンジタイムでの発表で2つの課題について発表 した。先生からは「それで進めていきなさい」との言葉をいただき、夏休み中に「第1章(序論)」と「第2章(性的欲望 ・フェミニズム・ジェンダーについての専攻研究を整理し、まとめる)」、「ゲームやCDなど研究資料、材料を集める」、 以上3つの課題を頂いた。

 合宿が終わり無事、夏季集中講義を終えた現在は、第1章である序論を書き進めている。8月中には自分が卒論で明らか にしたいことをきちんと明確にし、第1章を書き終え、9月に性的欲望・フェミニズム・ジェンダーについての文献にあた り第2章の大枠は書き終えたいと思っている。しかし私は夏季集中講義の記録班であるため、夏休みはその映像編集、HP 制作作業と並行して卒論を進めていかなければならない。その2つを同時にこなすには相当綿密なスケジュール作成が必 要だろう。しかし私はスケジュールを立てることが苦手である。(私のブログのリンクを張ります)きちんと予定を立て る癖をつけて、両方ともしっかり取り組むよう頑張るしかない。

<*1>岡本信彦
プロ・フィット所属の男性声優。株式会社ランティス内のレーベルkiramuneで歌手活動も 行っている。詳しくは公式ホームページを参照。
声優:http://www.pro-fit.co.jp/talent_okamoto.html
歌手:http://kiramune.jp/artist/okamoto/

<*2>乙女ゲーム
女性向け恋愛ゲームのうち、主人公(プレーヤー)が女性のゲームの総称である。「乙女ゲー」「乙女ゲ」「乙ゲー」などと略称される。

<*3>夢小説
主にウェブ上で公開されている、特定の登場人物の名前を読者が自由に設定して読むことの出来る小説である。 読者が閲覧前にクッキーやJavaScriptなどで名前を登録しておくことにより、小説内の特定の人物の名前が登録 した名前に変換されて表示される。夢小説(ゆめしょうせつ)、ドリー夢(ドリーむ)、ドリ小(ドリしょう)、 名前変換小説などと呼ばれることもある。2000年頃に生まれたとされる。

<*4>シチュエーションCD
CDに音声のみを収録したもの。担当声優が1人の場合は「シチュエーションCD」と呼ばれる。

<*5>裏夢小説
夢小説の中でも性描写の入ったもの。