もこ
~第1回、第2回発表振り返りレポート~

 「自分が関心のあるもの、またどんな風に関心があるのか」を発表する第1回発表で、 私は「乙女系ジャンル(主に乙女ゲームと岡本信彦<*1>)」について発表した。発表の形式 としては、原稿を用意し口頭で話しながら、パワーポイントと映像(乙女ゲームのPVと、岡 本信彦のライブ映像)、CD(岡本信彦のシチュエーションCD、キャラクターソング)を流し た。自分なりに乙女系ジャンルを好きという気持ちは伝えられたと思う。

 しかし第1回発表の後、先生から「乙女系ジャンルにどれだけ熱心に入れ込んでいるか は伝わってくるが、これからは卒論に向けた発表だ。それには何でそれが好きなのか、考え を深めていく必要がある。」というアドバイスをいただいた。確かに第1回発表において私 は、「ただそれが好き」ということを発表しただけで終わってしまっていた。私の中で乙女 系ジャンルが「好き」ということが当たり前になっていて、好きなものに対して疑問を持つ ことがなかったのだ。それが最大の反省である。


 第2回発表では、第1回発表の際にいただいた先生のアドバイスと、反省を生かして「な んで好きなのか?」ということに重きを置き考えた。

 はじめは今回の発表の題材を、前回の発表と同じ「乙女系ジャンル」にするか、全く別 のものについて発表するか悩んだ。なぜなら私は今まで乙女系ジャンル以外にもたくさんの こと(一般のゲームやバンド活動、合唱、東方project<*2>、キャラクター、ヴィジュアル系 バンドのライブ、ファッション・古着、寺社仏閣巡り、ぬいぐるみ収集、世界地図など)に 興味を持ち、それらに時間を費やしてきたからだ。だから、卒論を見据えた発表でこれらに ついて扱うのもよいのではないか、と感じた。

 しかし自分の中で小学生から現在まで、人生の半分以上をともにしてきたものを考える とやはり乙女系ジャンルであり、今の「私」があるのは間違いなく乙女系ジャンルによるもの だ。しかし、乙女系ジャンルを妄信的に「好き」だという思いで頭がいっぱいで、乙女系ジャ ンルに対しての違和感やマイナスな面(非常に商業的な点)を心の奥底で自覚しながらも目を 背けてきた。このことは乙女系ジャンルにおける常識(例えば、『無限回収』<*3> )につい て違和感を抱きつつも、あえて見ないようにしていたことにもうかがえる。思い返せば、実際 「なんで、同じグッズを10個も持っているのか。」と、一瞬我に返ることもたびたびあった。 そう考えると私は乙女系ジャンル好きと言っているが、その全ては知らない。今まではマイナ スな面を知り、乙女系ジャンルを嫌いになることを恐れていた自分がいた。そのためまだまだ 乙女系ジャンルには、あえて目を背けてきたマイナスな面がたくさんあると思う。そして今の 私はマイナスな面を含めた乙女系ジャンルの全てを知りたいとも思っている。これらの点から 「もっともっと乙女系ジャンルと向き合っていきたい」という思いが強くなった。結果、第2 回発表も「乙女系ジャンル」について発表することになった。

 つぎに「何で乙女系ジャンルが好きなのか」考えるために、「乙女系ジャンル」につい て過去の恋愛(二次元含む)、家族から考えようとした。理由は第一に、私の取り扱う「乙 女系ジャンル」には乙女ゲーム、夢小説、シチュエーションCDがあり、それらの内容は恋愛 ものが多く、まずは過去の自分の恋愛について振り返ることが大事だと考えたからだ。第二 に、家族から考えようと思ったのは、家族は最も身近な存在であり、「私がどのような人間 か」を考えるにあたって、必要だと思ったからだ。以上のことを踏まえ、第2回発表のテーマ は「なぜ『乙女系ジャンル』を好きになったのか―過去の恋愛(二次元含む)、家族から考 える―」となり、前回の発表からより自分自身を掘り下げるものになった。結果的に、私なり に「乙女系ジャンル」と過去の恋愛、家族の間に繋がりを見いだすことができた。


 しかし、卒論を見据えた発表としてはまだまだ不十分なものだった。発表後に先生から、 「正常に進化している。前回の発表から深めようとしているのは感じられる」という言葉をい ただいた反面、「境遇と題材、つまり過去の自分自身の恋愛や家族との関係を乙女系ジャンル とダイレクトに結びつけすぎている。」という意見をいただいた。この意見を聞いて妙に納得 している自分がいた。私は「乙女系ジャンル」を過去の恋愛、家族から考えようとしているう ちに、無意識に「乙女系ジャンル」が好きな理由をその二つに当てはめようとしていたのだ。

 また先生は、「自分と対象が泥沼のように入り混じっている。自分と対象を引き離して 考えなさい。」つまり、私自身が対象を身近なものと強く思っているため、私と対象を分けて 考えることができていない、まだ「好き」という気持ちから抜け出せていない、とおっしゃっ たのだ。似たアドバイスを発表後に行った打ち上げの場で、長谷川ゼミの卒業生の先輩からい ただいた。そのアドバイスというのは「一度、乙女ゲーム(対象)を嫌いになる覚悟はある? それくらい考えて『なんで?』と疑問に思わないと始まらないよ。」というものだった。先生 と卒業生の先輩の言葉を受けて、私は「好き」という気持ちは強いけれど、その「好き」の対 象を嫌いになるほど「なんで?」と考えることができていなかったことに気付いた。自分の中 で「好き」に対して、何の疑問も持たずに「好き」を受け入れてしまっているところに原因は あると思う。つまり私は「対象を客観的に見て考える」ことが足りなかったのだ。

 考えることが足りなかったという点では、先生から「短絡している。悩んでいない印象が ある。もっと悩むべき。」という言葉もいただいた。確かに私は上で述べたとおり「好きなも の」を「嫌い」になるまで悩み、考えたことはなかった。「好きなもの」について「考えて」 いても、どんどん「好き」になっていく一方だった。ここで述べる「考える」というのは、妄 想の意味に近く、今までの私は「好きなもの」に対して本当の意味で考えたことはなかった。

 第2回発表までは「乙女系ジャンル」が好き、という前提で発表していたのだが、「乙女 系ジャンル」が好きだと思っている自分とは何なのかということを考えるためには、どうして 好きなのかということを考えていく必要があった。「嫌い」になるまで「なんで?」と考え悩 み、乙女系ジャンルに対して客観視できる他のゼミ生に話すことがこれからは大切だと思う。


 また第2回発表をするにあたって、杉浦由美子著『ケータイ小説のリアル』(中公新書、 2008)を読んだ。この本には、『乙女系』の記述もあったので、読むことにした。そして私な りに『乙女系』に対する理解が多少なりとも深まったつもりでいた。しかし先生からは「君は オタク系の文献を読むより、まずはメディア社会学、メディア文化論などの本を読み下地を作 った方がいい」という意見をいただいた。私は『乙女系ジャンル』を卒論で取扱いたいという ことでオタク系、女子系の文献につい目がいきがちだ。おそらく、文献選びにも、私と対象 (乙女系ジャンル)を分けて考えることができていない点が表れていたのだと思う。これから はメディア社会学やメディア文化論についての文献を読んできちんと勉強していこうと思う。


夏合宿での発表では卒論のテーマを決めることが目標だ。私にはそれまでに最低限すべきミッションが3つある。
1.乙女系ジャンルをはじめとした、好きなものに対して「なんで?」という疑問を常に持ち、考え、悩むこと。
2.とにかくゼミ生と話すこと。
3.メディア社会学、メディア文化論といった学術的な文献を読むこと。

 以上のことを最低限のミッションとし、夏合宿までの残り約1ヵ月でがむしゃらに取り組んでいきたいと思う。



<*1>岡本信彦
プロ・フィット所属の男性声優。株式会社ランティス内のレーベルkiramuneで歌手活動も 行っている。詳しくは公式ホームページを参照。
声優:http://www.pro-fit.co.jp/talent_okamoto.html
歌手:http://kiramune.jp/artist/okamoto/

<*2>東方project
同人サークル上海アリス幻樂団の著作物である。弾幕系シューティングを中心とした ゲーム、書籍、音楽CDから成る。東方Projectの作品を一括して東方シリーズ、東方Proj ectシリーズと称することもある。
上海アリス幻樂団HP:http://www16.big.or.jp/~zun/

<*3>無限回収
元々は同じアイドルの写真を何枚も集めることの意味であったが、現在ではアニメ系 グッズなど収集する際にも使われている。こうした無限回収を行う理由としては、1枚を 観賞用、2枚を保存用など用途別に分けるためと考えられる。また単なるコレクターとし てお気に入りのものを沢山集めたいという心から無限回収を行うケースもある。
引用:http://netyougo.com/idl/8115.html