じーや
~第4回発表振り返りレポート~

 私は夏合宿での第3回発表を通して、自分が長年行ってきたアイドルの真似をするという行為を1つの現象として捉えてみたい ということを発表した。そして、先生からの助言を経て「ピンクレディー」 を題材にそれを見ていくことに決定した。ピンク レディーの振り付けを真似するということがひとつの社会現象のようにして起こった時代があり、その頃にピンクレディーが どのように真似され、そして語られたのかを見ていくのが良いのではないだろうかという助言であった。私は第3回発表時には、 アイドルの真似をするという現象の変遷を見ていきたいと思っており、その中にもちろんピンクレディー現象も含めるつもりで いた。今考えればそれらの変遷を一つ一つ細かく見ていくというのは膨大な作業であり、執筆時間の限られた卒業論文でとても 扱えるようなテーマではないだろうと思う。その中の1つの現象や年代に絞って調べていくという発想に至らなかったのは、当時 の私は論文とはどうあるべきかをよく理解していなかったことが露呈している。つまり、広く浅くいろんな現象や年代を調査して も、全体として内容や情報の薄い論文にしかならないのである。何かひとつの現象や限られた年代に絞り、それをしらみつぶし に調べていくことが大切なのだと思う。このようなことは、9月に行ったフィールドワークでも体感することが出来た。私達は 「東京貼り紙マップ舞浜編」というフィールドワークを行い、そこでは舞浜のある範囲の中で貼り紙や落書きをしらみつぶしに 調べていくという調査を実施した。この調査も同じように、広い範囲で抜けのある調査をしても意味がない。何故なら、それでは 正確な調査を行ったとは言えないからだ。範囲を絞ってその代わりに抜けや漏れのないように調査をすることで、狭いながらも 正確な調査を行うことが出来る。抜けのある調査では、見えてくるはずのものも見えてこないかもしれない。しらみつぶしに正確 な調査をすること、それがフィールドワークの目的であったと思う。そのことが卒論にもつながるのではないかと考えたとき、 改めてフィールドワークから学び得たものは多いと感じた。

 本題に入るが、10月23日24日に行われた第4回発表はおそらく私達にとって最後となる発表であった。その為、後悔の残ることの ないような発表にしなければと考えていた。ここで少し前回の発表を振り返りたい。夏合宿時に行われた第3回の発表では、私は 口頭発表の準備は後悔なく出来たものの、レジュメの準備で詰めの甘さが出てしまった。つまり、あまり良いレジュメを作ることが 出来なかったのである。良いレジュメとは、聞き手にとって発表への理解がより深まるような、発表を聞く上での補佐となるもの であると思う。しかし第3回発表時の私のレジュメはまるでただの発表の目次のようで、聞き手にとって発表の補佐の役割を果たす ものだったとは言い難かった。聞き手はレジュメに載っていない発表内容を追っていくので精いっぱいになり、満足に発表を聞く ことが出来なかったと思う。このようなレジュメになってしまったのは、自分が発表したいことのポイントを上手く抑えることが 出来ず、何を載せたら良いのかさえ良くわかっていなかったからだ。せっかく口頭発表の準備に精を挙げたのに、レジュメの不出来 からその発表が聞き手には伝わりづらいものになってしまったということがとても悔しかった。この発表の後の反省では、レジュメ の作り方について他のゼミ生もいろいろとアドバイスをくれた。例えば口頭発表の原稿を作成した後に、そこからポイントを整理して レジュメに反映させるということなどである。3回目にもなってレジュメのアドバイスをもらうことに情けなさを感じたが、せめて 次の発表ではこれを活かさなければと感じた。
 そのような経験もあり、今回のレジュメは自分が発表で言おうとしていることのポイントをおさえ、レジュメに反映するようにした。 それによって聞き手にとって発表を聞く上での補佐となるようなレジュメを作ることが出来たと思う。出来て当たり前のことだが、 ここへ来てようやくレジュメらしいレジュメが作れたように感じた。

 今回の発表は、8月4日、5日にかけて行われた発表から2カ月以上が経過している。私はその間ゼミの活動と並行して主に5つの ことを行ってきた。それは、 1、ピンクレディーについて調べる 2、振り付けの変遷を中心にアイドル史の知識を深める 3、テレビ文化について調べる 4、模倣について学ぶ 5、ピンクレディーについて記載のある雑誌での調査を始める である。
1から4までは、論文を書くうえでの前提となる知識を得るための先行研究といえる。私が最も力を注いで取り組まなければならない ことは5に書いたような調査である。私は第3回発表以降、調査する媒体を雑誌と新聞に決め、また調査する年代を1976年から1978年 に絞った。そしてその中で、ピンクレディーがどのように真似され、そして語られたのかをしらみつぶしに見ていくことに決めた。 ピンクレディーの活動期の中でもっとも人気が高く、絶頂期と呼ばれたのがこの3年間だったからである。第4回発表までに少しでも この調査を進めておかなければと思っていた。何故ならそれを進めていかないことには論文の本体となる部分をどのようにまとめて いくかが見えてこない為である。しかし、2のアイドルの歴史や3のテレビ文化といった先行研究をまとめることに行き詰ってしまった こともあり、なかなか調査に手がまわらなかった。私が発表までに調査することが出来たのは『平凡』(マガジンハウス出版)という アイドル誌のみで、冊数は40冊程度であった。アイドル誌だけでも120冊ほど、週刊誌は400冊ほど当たる予定でいたため、40冊という 少ない情報量ではやはりどのように目次立てをし、情報をまとめていくかという具体的な構想までは練ることが出来なかった。皆から アドバイスをもらえる貴重な発表で、具体的な構想を相談出来なかったことが悔やまれる。これに関しては後悔しても仕方が無いので、 これから資料や情報量を増やしていく中で早めに構想を固め、ゼミ生や先生にも積極的に相談しようと思う。

 また、私はアイドルの振り付けを真似するのが趣味であると話していた第1回の発表から、先生や他のゼミ生に「発表で踊れば よかったのに」と言われることが多々あった。たしかに、そもそも私がどのようにアイドルの振り付けを真似しているのかは、実際に 皆の前で踊ってみないことには分かりえないだろう。私が論文を通して「ピンクレディーがどのように真似されたのか」を調査するに あたって、まず自分がどのように真似しているのかを皆に客観的に見てもらうことも必要なように感じた。しかし、皆の前でアイドル の振り付けを踊るというのは、私にとってはあまり想像出来ないものであった。おそらくそれは、今まで私が自己満足、自己完結の ような形でアイドルの振り付けを真似していたからだと思う。つまり、人に見せることを目的としたことはほとんどなかったのである。 自分でちょっと満足に踊れるようになれば、それで良かったのである。人に見てくれと頼んだり、意見を求めたりするようなことも なかった。とはいえ恥ずかしさはあったものの、やりたくないという感情にはならなかった。むしろ、この際だから皆にアイドルの 真似をする私を見てもらえば良いと思うようになった。そして、やるのならば中途半端にせず出来る限り本物に近付けたいと思った。 その為にはピンクレディーの特徴である振り付けを完全にマスターするのと同時に、彼女らが歌唱時によく着用しているギラギラに スパンコールをあしらったスカートの短い衣装を用意し、着用しようと思った。このような衣装は、振付とともに彼女らのトレード マークとなっている。以前、ピンクレディーファンだったというゼミ生のお母さんからお話を聞いた際、衣装も作ってピンクレディー の真似をしていたというエピソードを聞いたことも思い出した。振り付けと共に、衣装はピンクレディー、及びピンクレディーを真似 する人にとって欠かせないものなのである。その為、社交ダンスの衣装やボディコンなどを安く取り扱う衣装屋に足を運び、なるべく ピンクレディーに近いと思った衣装を購入した。1着2000円ほどであった。
 発表では『渚のシンドバット』 と『UFO』 という曲のそれぞれ1番のみを披露した。感想としてはやはり恥ずかしさがあったが、 衣装やマイクまで取りそろえたのに今更恥ずかしがっても仕方が無いと思って踊りきった。ある意味衣装にパワーをもらったようである。 同時に、夏季集中講義の際に<まゆゆ>がロリータファッションに身を包んでいたことを思い出した。受講生に対して厳しくコメントを しなければならない立場であったことから、戦闘態勢になれるロリータファッションを着用したとのことだった。服装からパワーを 貰っていたという点で、今回の私と共通するものを感じた。

 このように私の第4回発表は口頭発表と振り付け披露という異例のスタイルになった。先生からの講評では、全体としてはこのまま 進めて良いのではないかと言っていただけたが、本体となる雑誌や新聞調査を進めていかないことには具体的なアドバイスはまだ出来ない と言われた。自分でも11月中には一通りの資料を集め、論文の本体となる部分の構想を練らなければと焦りを感じている。今年はゼミ全体 として進みが遅いことを先生からは以前より指摘されていたが、他のゼミ生より少しばかり進んでいるからと、どこか危機感に欠けてしま っていたのかもしれない。時間がないことを十分に把握し、計画的にそして効率的に調査を進めていかなければと思う。

また、第3回でも私は本の内容を鵜呑みにし過ぎないようにと言われていたが、やはりその傾向は抜け出せていなかった。前回の発表 では1冊の本しか読んでおらず、またその本の内容に縛られてしまっていた。その為、今回は例えば「テレビ」という1つのテーマに対して も3~4冊の本にあたり、いろんな意見を取り入れて考えることを意識したつもりでいた。しかし、その読んだ本の内容がかなり似通って いることも感じていた。ちなみに私がテレビに関して読んだのは、『テレビと日本人 「テレビ50年」と生活・文化・意識』(田中義久、 小川文弥著、法政大学出版局、2005年)、『テレビ視聴の50年』(上村修一他著、NHK放送文化研究所、2003年)、 『テレビという記憶 テレビ視聴の社会史』(萩原滋著、新曜社、2013年)である。先生からは、私が読んだ本はいずれもデータを元に した調査の結果を書いているものであり、それだけを鵜呑みにしてはいけない、もう少し文化的側面の本も読むべきとのアドバイスを頂いた。 特に『テレビ視聴の50年』という本はテレビの制作側の視点からみた調査データをまとめたものであるという話は以前から先生より伺っていた。 本の選別時にその本がどのような側面を持っているものかをきちんと把握しないで選んでしまい、結果似通った本ばかりを読んでしまった のだと思う。まだ先行研究で本を読むことが多々あるので、この事を意識したい。

 ゼミ内提出まであと2カ月を切っている。11月はとにかく資料集めに専念し、12月からその情報整理や他の章の手直し、そして考察や まとめに入っていくという目標でスケジュールを立てた。このスケジュールで進めていけるよう、常に気を引き締めて取り組んでいきたい。


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