じーや
~第1回、第2回発表振り返りレポート~

 私は第1回の発表では「女性アイドル」について発表をし、第2回の発表では「大人になるとはどういうことなのか」 について発表をした。それぞれを振り返り、その反省を踏まえて次の発表に向けての準備をしていきたいと思う。

 まず第1回では、私は「女性アイドルが好きな自分についての年表」を作成し、発表を行った。私は、卒論は自分の 好きな女性アイドルを題材に書きたいという漠然とした思いを持っていた。そこでまず年表を作成し、自分が「どのよう に女性アイドルに惹かれていったのか」を振り返ってみることから始めていきたいと思ったのだ。初めて自分のお金でア イドルのCDを買った6歳の頃から現在に至るまで、その時々で「どんな女性アイドルが好きであったか」「何がきっか けでハマったのか」「アイドルが好きな自分におけるエピソード」などを順に挙げていった。そして年表による振り返り を行った中で、自分がアイドルを好きになるには「女性アイドルをマネしたい」という気持ちが常に原動力として働いて いるという発見があった事を話した。ダンス、歌声、容姿など、惹かれる要素があると「マネしたい」と感じ、そこから 「好き」が始まる。「マネしたいと思うかどうか」というのが自分にとってその時々の女性アイドルに深くハマるきっか けとなっている事がほとんどであり、マネしたくなるような要素のある女性アイドルを自然と好きになっている傾向があ ると感じたのだ。それは、自分が好きなアイドルの髪型をマネしようとしていたなどのエピソードからも伺うことが出来 る。「女性アイドルをマネする事」というのが自分にとっては切実な事なのかもしれないと感じていることも話した。
 発表後のディスカッションでは、デビューしたての“AKB48”(註1)に対して私が使った『80年代風』『昔っぽい』 という言葉について、具体的にどういうことかと問われたものの上手く説明する事が出来なかった。それにより、自分がな んとなくのイメージで出来あいの言葉を使っていることや、言葉のひとつひとつの意味に対して、深く意味を考える事なく 使ってしまっていたことを痛感した。また、抽象的な表現をした部分に対して具体的なエピソードを求められうまく答えら れないという場面もあり、自分を振り返ることがまだまだ出来ていない事も痛感した。先生からの講評では、「自分の中だ けの話になってしまっている視野の狭い状態が現状であり、これから論文を書くにあたっては自分のことをその他とどう結 びつけていくかが重要である」というお話をいただいた。先生はそのわかりやすい例として、私が年表を「自分の年齢軸」 で書いてしまっていることを挙げてくださった。そして私は、これこそが自分の中だけの話で発表を行っている現状をとて もよく表していると納得した。まずはこれを「西暦の軸」に変えるというだけでも、自分中だけでなく、多少は世間との繋 がりのある年表が作成出来たと思う。そうする事で、意識として自分の枠から出る事が出来たであろうと思い、自分の枠か ら1歩抜け出す事を意識して次回につなげたいと考えた。

 この発表で自分を振り返った事で気づいたことがもうひとつあった。それは、「自分は女性アイドルを昔ほど好きとは 言えないのではないだろうか?」という事だ。それは自分を振り返った事だけでなく、発表で周りのゼミ生の好きなものを 熱く語る姿勢を目の当たりにした事もきっかけとなった。まず年表を通して、私が女性アイドルにもっとも熱狂的にハマっ ていたのは高校生の時で、今はあの頃ほど好きという気持ちがない事に気づいた。女性アイドルのイベントに参加したり、 曲を聴いたりする機会も高校生の頃より確実に減っていて、アイドル離れしている事を実感せざるを得なかった。発表でも、 高校生の頃の事はアイドルとのエピソードをたくさん織り交ぜながら話す事が出来ていた。しかし、大学生になってからの 事は、話せるエピソードさえ少なかったのだ。また、そんな自分は周りのゼミ生ほど「これがもっとも好きだ」と熱く語れ るほど現時点で女性アイドルを好きと言えないのではと感じた事から、女性アイドルをテーマに卒論を書くことに疑問や不 安を覚え始めてしまったのだ。
 今思えば、周りと比べたり好きではなくなりかけている事に不安を覚えたりした自分は、それこそとても視野が狭かっ たと思う。また、それは「論文」とはどういうものであるかをまったく理解出来ていない状態であったがゆえだと感じている。 論文というものは、対象を「好き」であるなどといった自分の中の感情は一切切り離して客観的に考えなければならない。そ の為、論文の出来が対象を「好き」である度合いに左右されるものではないのだろうと今は感じている。しかし、第1回の発 表後はとにかく「もっと好きなものが他にもあるかもしれない」「もっと切実な何かを探さなければ」といった焦りでいっぱ いになってしまっていた。その為、気づけば「女性アイドル以外で取り扱いたいテーマを探すこと」が、次の発表までの自分 の課題となっていた。むしろそれを探す事だけが目的となってしまい、結局それらしいものが見つけられたことに満足してし まったのが現状だ。振り返れば、その時点で目的を見失い「自分の枠から1歩抜け出そう」という第1回の反省を生かす気持ち が抜けてしまった事が、第2回の発表を無駄にしてしまった事に大きく繋がったと思う。

 第2回で私は「大人になるとはどういうことなのか」というテーマで発表を行った。第1回で発表した「女性アイドル」と は特に繋がりを意識せず、ただただ自分にとって切実な事を探した結果として選んだテーマだった。自分は女性アイドル以外 に教育テレビ、玩具などの「子供向けのもの」が好きである事に気づき、何故それらが好きであるのかと考えた結果「大人に なりきれていない自分」に辿りついた(と思った)のだ。「何故自分は大人になりきれないのだろうか?」「そもそも大人に なるとはどういうことなのだろうか?」といった疑問を持ち、「大人になりきれていない自分」や「大人になるとはどういっ た事なのか」というのは切実なテーマなのではないかと思った。「子供向けのもの」という対象に対して、私はただ好きだか らというだけでなく、守られるべき「子供」に戻れる瞬間のような安心感を覚えながら触れているようにも感じていた。そう いったものに安心感を覚えてしまう自分は、大人になることを心のどこかで拒んでいるのではないかと感じ、実際普段からそ のような自分を自覚している節もあった。その為、そんな自分から卒論に繋がる何かを探りたいと思っていた。
 しかし、結局はその何かに繋げることは出来ず、また自分の中だけの話で視野の狭い発表をしてしまった。自分の疑問や 違和感を発表の中で聞き手に丸投げして、何との繋がりも自分で見出せないまま、それで終わってしまったのだ。また、第1回 と同じように言葉をイメージでしか捉えられていないところもあった。多用していた「子供」という言葉に対して「子供とは どのくらいの年齢の子を指すのか」と聞かれ、上手く答える事が出来なかったのだ。発表中や準備段階では、切実と思われる 新たなテーマを見つけただけで満足しており、第1回と同じ失敗を繰り返していることに気付きもしなかったのだ。今思えば それに気付けなかった自分は第1回の発表を終えてから2カ月の間、いったい何を考えていたのだろうと思う。2カ月を無駄に しているというような指摘は先生からも受けてしまった。また、先生は「自分の中の問題や違和感を解決する為に論文を書く というのは一番最悪なパターンだ」とおっしゃっていたが、私がやろうとしていた「大人になれない自分を解き明かす」とい う事は、正しくこれに値すると思った。自分の疑問や違和感を学問的なところに結びつけなければ「論文」といえるものは書 けないというのは初歩的な話であるにも関わらず、私は理解出来ていなかったのだ。最悪な論文を書く方向へと進みつつある 自分を自覚し、正していかなければならない。第2回発表時点でもう6月、自分は未だに出発点で立ち往生している事に気づき、 早くここから脱さなければと感じて今に至る。

 第2回の発表後には飲み会が開かれ、昨年長谷川ゼミを卒業した先輩方が多く参加してくださった。私はそこで何人かの 先輩方に話を聞いていただいたのだが、成長出来ていない私の為に先輩方は本当に親身になって発表内容や相談事を聞いてく ださり、とてもありがたかった。先輩方との話の中で、自分は「考える」ということがそもそも出来ていないということに気 づかされた。先生にも指摘を受けた事であるが、私は考えた気になっているだけで何も考えられていないという現状にそこで ようやく気付いたのだ。自分の中で疑問や想いを巡らせているだけの状態を「考えている」と勘違いしていたのである。先輩 方からは改めて、「人に話を聞いてもらう事」「紙に書き出してみること(なぜ、なぜ、を追求し図に表すなど)」を考える 為の第1歩のアドバイスとしていただいた。これは第2回の発表後に先生からも出来ていない事として指摘された部分である。 もっともっと早く、これらを通して本当の意味で「考える」という事を始めなければならなかったと思うが、悔やんでも仕方 がないのでこれから常に意識して取り組んでいこうと思う。そうしていくことで、頭の中で堂々巡りする事ではない、本当の 意味での「考える」ということを理解していきたいし、実践したい。
 また、先輩からは文献についてもアドバイスをいただいた。私は今回「大人になる」というテーマに合わせて、西平直喜 著の『成人になるということ 生育史の心理学から』   (東京大学出版会 1990年)という文献を選び、読み進めていた。 しかし、そこに書いてある内容と自分の共通点を見つけては、本の中に結論を求めてしまっている自分がいた。これでは自分が 欲しい情報だけを取り出して扱う事になりかねない。私はそもそも本の選び方や文献の生かし方さえよくわかっていない状態だ ったのだ。先輩からは、まずは考えるという事、論文を書くという事を踏まえた上で基礎になる本を読んでみてはどうか?とい うアドバイスをいただいた。その上で難波江和英著の『現代思想のパフォーマンス』(光文社新書 2004年)や、マイケル・ポ ランニー著の『暗黙知の次元』(ちくま学芸文庫 1980年)などの本を紹介していただいたが、自分でも基礎的な本を探してい るところだ。

 私は再び「女性アイドル」というテーマに立ち戻っている。前ほど好きではなくなってきているという事が、「好き」とい う感情を切り離して女性アイドルについて深く考える事の出来るチャンスであると前向きに捉えたからだ。とはいえ先にも述べた 通りで、私は第2回発表時点で未だ出発点から動く事の出来ていない状態だ。この事態を把握し、早急に抜け出していかなけれ ばと思っている。その為に、まずは自分が扱いたい「女性アイドル」という対象について深く知ることから始めなければならな い。それは自分のイメージの中にある自分の好きな「女性アイドル」ではなく、世間で一般的に言われる「女性アイドル」であ る。それが一体なんなのかを深く知り、明らかにする為には、歴史やバッググラウンドにも着手していく必要がある。これらを 深く知った上で、自分にとって切実なテーマを見つけ出していこうと思う。
 第3回の発表では、自分が勉強してきたと胸を張れる発表をしたいし、しなければならない。次の発表までの1カ月を有効に 使いたい。


※註1 AKB48
秋元康氏のプロデュースにより2005年12月にデビューしたアイドルグループ。秋葉原の小さな劇場から活動をスタートさせ、現在 では全国、海外へと姉妹グループを展開し、国民的アイドルグループへと成長している。